ウォシュレットが壊れて

 昨日部屋でパソコンをしていると、妻が部屋をノックして入ってきた。


 聞けば、トイレの掃除をしようと便座を上げたところ、便座の付け根が壊れてしまい、ウォシュレットが使えなくなってしまったらしい。


 このウォシュレットには並々ならぬ義父の息がかかっており、壊れると何かと面倒な代物なのだ。


 早速二人で現場を確認に行くと、妻の言う通り、便座の付け根の樹脂部分が壊れてしまっている。得意の必殺中国製、超強力接着剤で元に戻すことはできるかもしれないけれど、この場所にかかる負荷はそれなりのもので、例え接着ができたとしても経年劣化から同じ状況になってしまう可能性がかなり高そうに思えた。


 時刻は11時の少し前。妻も私も面倒なことになったと、二人の間には休日の朝から嫌な空気が漂う。しかし、考えていても事態は解決しないので、義父に言って今回は修理ではなく新しい物を購入し、取り付けるようにしようと言うことに決めた。


 妻が義父に状況を説明し、私は義父がこだわっている送風の機能が、おそらくこれから取り付ける機種にはない旨を説明し、了解を得た。


 私は念のため、義父にはそれなりのブランドのウォシュレットが必要だろうと、部屋の中のへそくりから5万円を取り出した。


 同時に妻は、義父から10万円を受け取っていた。こっちは毎月かつかつの生活なのに、全くもって今の老人はお金を持っている。


 昨年エアコンを買い、対応のとてもよかったホームセンターに行った。そこはお膝元であるアイリスオーヤマの息がかかっており、家電全般に力が入っている。


 ウォシュレットはAmazonなどで見れば、2万円位の予算があるならとてもいい物を買うことができる。私の感覚ではこの位だ。


 しかし今は10万円を掴まされて、今の機種との兼ね合いもある。売り場には各メーカーの物が揃っていたが、メーカーを絞り、機能や在庫状況などでふるいにかけると、6万円の物だろうな、という事になり、これを購入し家に持ち帰った。


 売り場の担当の方はとても感じが良く、取り付けに関する私の不安に全て答えを出してくれた。私が家のウォシュレットの配管状況を動画に撮影して、持って行ったことも良かったかもしれない。


 同じメーカーだったが、震災後に買った物で既に10年以上が経過しているためか、取り付けの土台を取り換える必要があったものの、こんなのは車の整備に比べれば簡単な作業である。配管もジョイントもパッキンも全て付いており、今まで付いていたものを取り外し、新しい物に取り換えるだけでよかった。


 ただ、水の絡む作業なので、一瞬だけ家の水の元栓を閉めなければならないのと、ジョイントの接合部分にはきちんとパッキンを施す必要があった。水の元栓は、冬の水抜きでわかっているし、パッキンも同胞されていた物を使うと同時に、念には念を入れて、手持ちのオスネジに巻く白くて薄い帯状のパッキンも施し、完璧に取り付けることができた。


 途中、滅多に行かない高い喫茶店で昼食を取り帰ってきたが、三時過ぎには全ての作業を終えることができ、妻はとても喜んでくれた。義父からは何の言葉もなかった。


 今朝は珍しく義父が私の元にやってきた。今日は病院だというので、わかりましたと返した。その次には、「あのウォシュレットは、もっと水の勢いが強くならないのか?前の物はもっと強かった」などと言われた。お礼はない、金は出すが、挙げ句の果てに製品にまで文句を付けるこの老人は、全くもって何者なんだと、朝から私も機嫌が悪くなった。「同じメーカーの製品の、売り場で一番高いやつですよ。強くはなりませんね、仕様です」と言っておいた。


 妻に言うとまたストレスを抱えてしまうので、今もまだ、義父に言われたことを妻には言っていない。おそらくではあるが、TOTOのこのタイプは、ボタンを二度押しすることでムーブ機能が働き、水圧が少し高くなるようになっているのだが、これがわかっていないのかもしれないと思い、会社に行く前に説明をしておいた。


 帰ったら説明書のコピーを便所に貼り付けておこうと思う。


 しかしまあ、自分の下の機能が衰えているのをウォシュレットで補っているのかどうかはわからないけれど、全くもって自分勝手な老人に、ただただ呆れるばかりである。


 この6万円のウォシュレットを取り付けている家は、果たしてどの位あるだろうか。大抵は数万円のはずだ。それなのに、なのである。


 前の物は出張取り付けで12万、何度も壊れてその度に出張修理で2-3万の修理費がかかっている。今回は6万円だから気に入らないのだろうか。そんな金があるなら、娘である妻が病気になって入院した時くらいはお金を出しなさい、と言いたいのである。



 

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