零和のバブル
かつて、アフィリエイトという仕組みを使ってウェブサイトを作る仕事をしていた時期があり、今でもインターネット上にいくつかのサイトが放置してある。
グーグルという検索エンジンは、良質なサイトを検索上位に表示する仕組みになっており、私などの作ったサイトは、インデックスこそされているものの、検索エンジンからはそれ程高い評価を得ることができていないため、検索したところで、なかなか発見されることはない。
これが上位に出ていると、商品が売れる可能性が高くなる。大手から中小まで、広告代理店の営業の人たちは、このようなサイトを見つけては、「広告の掲載をご検討いただけませんか?」と、営業のメールを打ってくる。
震災前だからもう10年以上前になるけれど、かつてはこのようなメールがよく来ていた。検索エンジンの仕組みも今ほどは洗練されておらず、私なんかが作ったサイトが上位に表示されていた頃だ。
検索エンジンはこの辺りの時期からアップデートを開始し、検索結果の精査を幾度となく繰り返すようになり、必然的に私などの作るサイトは順位が落ち、私のこの仕事も時代の流れと共に破綻を迎えた。
ここ数年はもう、代理店の人から連絡が来ることなどもなかったのだけれど、昨日メールを見てみると、サイトの隠れたところに仕込んである連絡フォームから、連絡が来ていた。
内容は、「こちらのサイトは、これこれのキーワードで、まるまる位に表示されているようです。是非ともこの広告の掲載をご検討いただけませんか?」というものだった。
最近ではやる気もないので、例え連絡が来てもそのままになってしまうことが多かったのだが、久しぶりのメールだったので、今回はきちんとしておこうと思い、返信した。夜の10時前である。
すると、ものの数十秒で返事が来た。会社にいるのか在宅なのかはわからないけれど、とにかく早かった。私もバブルの頃は、港区や品川区とかに事務所のあるとある会社に勤めていて、夜の10時とか11時とかまで残業をしたこともあったけれど、今こうして働いている人を目の当たりにすると、大変だなとつくづく思う。
ちょっと内容を見て、私ももう一度メールを書いたのだが、これには返信がなかった。これでいいのだと思った。
寝て起きて今朝の6時、出勤前にスマホがきちんと充電されているかチェックしたところでびっくり、こちらの方から返信が来た。朝の6時である。
私もかつては混雑が嫌だったし、座って眠りながら通勤したかったので、地元駅始発から2番の電車に乗り、6時半に会社に到着して仕事をしていたなんて時期もあったのだが、こんな時間にメールが来ると、昔を思い出して情が移ってしまう。
私がこのような感じで働いていたのはバブルの時代で、仕事内容はその頃景気の良かった業界の一つ、自動車関係の仕事だった。
今、若者を中心とするほぼ全ての人が一人に一台スマホを持ち、SNSやYouTubeなどをはじめとするコンテンツを、昔のテレビの如くに楽しむ時代となっている。
かつてない規模で、ネットの広告業界は売上げを伸ばしているのだろう。
私達の経験したバブルが、このような業界では起こっているのだろう。
日本経済の現状を少しだけ垣間見たような気がしているのだが、携わる方達はくれぐれも身体に気を付けて、無理をしないで働いて欲しいと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます