海外への送料

 コロナ禍以前、海外へ荷物を送るとなれば、日本郵便のサービスを使うのが一般的だった。


 安くて早くて補償もついてかなりお手頃の価格だったので、私はこのサービスを利用して、eBayで商品を販売し海外へ発送していた。


 皆さんが普通に考えるようなものではなく、持ち前の頭のおかしさを発揮し、カミサンに言わせれば「へんてこ」な、日本の文化に根付いた、商品ともがらくたとも言える数々の品物を販売していた。


 ということで、他の日本人セラーとは差別化ができており、一応これで生活していた時期が少しだけあった。


 これは、低価格の日本郵政のサービスがあったからこそだったのである。


 しかしコロナ禍になってしまった。日本郵便のサービスは、国際線の貨物室の空きスペースを利用していたことから殆ど機能しなくなってしまい、私の商売も行き詰まった。注文もなくなり、仮に注文が来ても発送ができないか、高額な海外資本のサービスを使って薄利か赤字を覚悟で発送するしか手立てがなくなっていた。


 昨日約4ヶ月ぶりにグレートブリテンから注文をいただいた。


 一応、日本郵便の替わりと言われるサービスがあるのだが、ディスカウントされているとはいえ、これはかなり値段が高い。


 商品代、送料、海外の税金など合わせて30ドル弱の商品なのに、この方法で送るとなると、足が出てしまうという勘定である。


 送料をアップデートしていない私が悪いのは百も承知なのだが、あまり高くすると売れないし、日本郵政のサービスが戻ってきたときに面倒なので、売れないこともあって以前のままの価格にしてある。


 結局、eBayの手数料やその他の経費、手数料を引けば大赤字という状態で、荷物を梱包し、発送の手続きをした。


 生活をかけて本格的にやろうとしているならこれではいけないのだろうが、今の私はいかんせん宙ぶらりんで、一応アカウントはあって、実績もそこそこあって、という状態のまま、eBayに多額の出店費用を払い続けている状態が続いている。


 ただ、日本郵便の場合は、最高峰のサービスを除いては郵便局に持ち込まなければならないという弱点があった。私の今の生活では地元の郵便局に営業時間内に持ち込むのは無理なので、毎回注文があると、本局のゆうゆう窓口に夜持ち込んでいたのだが、この窓口もかつては24時間受付が売りだったのにも関わらず、経費の見直しとか何とかで受付時間がかつてのセブンイレブン以下になり、受付の方々も海外の荷物に不慣れな方がかなりいらっしゃったりして、こちらも貴重な時間と交通費をかけて持ち込んでいるのに、あまりいい気持ちがしないことが時々あった。


 今回利用したサービスは、パソコンから集荷依頼をして玄関前に荷物を置いておくと翌日集荷に必ず来てくれて、夜間の自社便で成田の空港まで行ってしまい、翌朝にはこれまた自社の飛行機に乗っかって発送されていると言う、驚きのスペックを持ったサービスで、さすがに送料が高いことはある。


 今までの経験から、私の商品はそんなに爆発的に売れるものでもないので、これはこれで将来のために取っておいて、その他に何かを並行してやってみたいなというのが本音の所なのである。


 ちょっと持ち出しが出てしまうような形で、商売的にはダメなのだけど、かつて憧れていた英国の方に超特急で私の商品を届けることができるというのは、大きな喜びなのだ。この満足感は、ちっぽけな赤字を凌駕するものがある。


 そのうちにいいことがあるだろう。



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