引っ越し

 日本中で今、引っ越しがピークを迎えている。


 運転の仕事でいつも出入りしている某所に、連日引っ越しの荷物が沢山到着している。


 引っ越し業者の人たちがトラックでやってきて、そこで積み込みをしている。


 運送業界は高齢化が甚だしいが、この引っ越し業界だけを見るなら、とてつもなく若い人たちが集まっている。責任者もほぼ30代に見えるし、助手は殆どが学生のアルバイトだ。子供みたいな子もいる。


 かく言う私も高校時代、一番はじめに行ったバイトが引っ越しの助手だった。私の実家は多摩ニュータウンのはずれにあったので、団地から団地への引っ越しも多く、「何階おろしで、何階上げだ」なんて会話が多かったように記憶している。


 はじめて助手をした際、1.5トントラックのバックの誘導をした。誘導なんかもちろんしたこともないので適当に「おーらーい」なんてやっていたら、先方の縦長の看板を破損させてしまった。


 最後の方ではファミリーレストラン「デニーズ」のバイトと掛け持ちになってしまい、毎日「定時で上がります」と言っていたら、かなり顰蹙を買ってしまった。社会に出るのははじめてだったので、暗黙の了解などわかるはずもなく、仕方なかった。


 東京から屋久島へ引っ越しした際には、愛車ランクル40の空きスペースと、屋根のルーフボックス2つと、キャンピングトレーラーの中にいろいろな荷物を詰め込んで、業者を使うことなく何とか引っ越すことができた。準備の際、私自身はかなりわくわくしていたが、家電製品を買ってあげるからと一緒についてきた母親は、とても寂しそうな顔をしていた。


 カミサンの実家の仙台へはそれほど荷物も持たないで、屋久島生まれのねこと一緒にやって来たつもりだったが、20年以上暮らしていたら、荷物がどんどん貯まってしまった。最近になって「少しずつ処分しなければ、将来大変なことになるな」と思うようになってはいるのだが、いかんせん性格上、なかなか物を捨てることができないので、もうどうにでもなる、その時になればなるようになるだろうと思うようになってきてしまった。


 カミサンはかつて、こんな家はさっさと出て、マンションに住みましょう、なんて事を言っていた。しかし現実的にそれは無理なのと、義父が近いうちに死んでこの家は私達のものになるだろうから、それまで何とか我慢してここに住みましょう、ということになった。


 しかし、かつては体重が140キロ以上あり、誰が見ても65歳位で死んでしまうだろうと思われていた義父は、困ったことに80を超えても死なずに長生きしてしまっている。想定外だ。


 私もおそらくこの先引っ越しをすることはないだろうとは思うが、こればかりはどうなるかわからない。


 起こりもしないだろうことを今から考えても仕方ない。その時になったら考えよう。とりあえず、物を買わない、減らして行くことを少しずつ実践して行けばいいだろう。



 

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