年賀状
東京に、一人だけ仲の良い「地元の」同級生がいる。
年賀状をやり取りしていたが、ついに今年は来くなってしまった。
ご両親はお二人とも他界されているので、喪中ではないと思う。
同じくらいに結婚し、かつての奥様は存じ上げていた。しかし離婚して再婚し、今の奥様とお子様は存じ上げていない。
数年前までは、今年こそは会えるといいね、という文言が続いていたが、私は現実的に休みも取れないし、お金もなかった。必然的に会うことは叶わなかった上に、コロナが追い打ちをかけた形になった。
「なんで仲がいいのか不思議ね」
二人を知る妻は、事あるごとにこう言う。
彼と私とはいろいろな面で違いがある。彼はファッションやモノに強いこだわりがあり、今現在も世界をまたにかけて、その辺りの仕事をしている。界隈では重鎮とも言われるレベルになっている。
彼は一人っ子で、知り合った中学一年生の頃、既に自分の部屋に自分のステレオ一式を持っていた。服やモノなどをよく買っていたし、私とは違って、かなり経済的には余裕のある家庭だった。
うちのカミサンも一人っ子で、自分のステレオを持っていた。この辺り、共通する何かがあるようで、カミサンは東京に住む都会派の彼のことをかなり慕っていた。
原付の免許を取り、原付を買い、中型免許を取り、中型バイクを買い、車の免許を取り、車を買い、一緒に全国あっちこっちへ出かけた。二人ともキャンプが好きで、車に道具を放り込んで目的も場所も決めずに出かけて、適当な所でテントを張ってキャンプをしてしまうというのが、私達の旅のスタイルになっていった。
数年前、同じ事をまたやろうよ、と、年賀状で彼から誘われたが、私は借金を抱えて自己破産寸前だったので、泣く泣く断らざるを得なかった。仕方なかった。私が自分で撒いた種がおかした仕業だった。
彼は仕事でインスタグラムをしていて、僅かながらにプライベートも発信している。私は見つけてすぐにフォローし、彼の生活を追っていた。もう2年くらいになるだろうか。望んでいる訳ではもちろんないが、相互になることはなかった。
今年、彼から年賀状が来なかったことは、一つの区切りなのかもしれない。
私がいつまでも彼に会えない状況なのに、インスタグラムをフォローしたり、年賀状を送ったりするのは、実は彼にとっては迷惑なのかもしれない。
そう思い、先日彼のインスタのフォローを外した。
地元から遠く離れて暮らす私にとって、年賀状は友との友情を毎年確認する重要なツールだ。こんな形で、何人もいない竹馬の友が離れてしまったことは寂しい限りだが、これも自分のまいた種の結果だと受け止め、しょぼくれることなく前を見て進んでいきたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます