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 殆どの運送会社では、出発前に点呼を取りアルコールチェックをする。


 我が社も数年前からアルコールチェックをするための、立派な機械が導入された。


 個人を認識する操作をした後、自分用のストローのようなもので機械に息を吹き込むと、その息にアルコールが入っていないかがわかるという仕組みだ。かなり精度は高い。


 ここで引っかかると、その日の運行はできなくなる。いつかも書いたかもしれないが、前に勤めていた大手運送会社では、アルコールが検出された時点でクビだった。警告も何もなく、一発クビである。それほどまでに厳しくなっている。


 しかし今朝会社に行ってみると、機械を動かしているパソコンの画面が真っ黒だった。アップデートなのか再起動の途中なのかわからないが、とにかくパソコンが動いておらず、それに繋がっているアルコールチェックの機械も稼働していない。


 毎朝点呼を取る係の人が何度か強制終了したり、何やらいろいろとやっているようだったが、結局今朝、私のアルコールチェックはできなかった。


 このパソコンは、アルコールチェックの機械が導入された時からスリープも何もなく、24時間つけっぱなしだったので大丈夫かなとは思っていたが、やっぱり壊れた。かなり頑張っていたと思う。


 係の人が再起動する操作と、その後のパソコンの動きを、朝の忙しい時間ではあったけれどしばらく見ていた。私は屋久島に再度出発した20数年前から常にパソコンを使っていて、今まで何台も壊してきているので大体の感じはわかるのだが、会社ではその事を言わずにおとなしくしている。


 椅子に座って黒く固まった画面をぼーっと見つめる。事務所内にはマスクなどには意識のない運転手達が三人いて、朝からカップ焼きそばの大盛りをすすりながら、そろそろ年金をもらうんだとか何とか話をしている。マスクくらいしてくれよと心では思うも、運転手達はあまりこの点に関して意識が高くない。普段はそんなことは思わないが、事務所の椅子に座り、真っ黒な画面を見ながらじっとしていると、早くこの場から去りたいと思った。


 結局、事務所の配車係が出勤してきてもパソコンは起動するには至らず、配車係了承ということで、今日は特別にアルコールチェックなしで出庫することになった。


 はじめてこのパソコンがおちるのを見ていたが、OSはWindows7だった。


 パソコンを使って仕事をしていくなら、常に新しいOSにした方がいいのだろうが、やはり諸事情あってそれを完璧にやっていくのは難しいのだろう。


 中小企業の厳しい現実を見たような気がした。


 オミクロンが来ないことだけを祈っている。



 

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