事故多発

 私がお世話になっている運送会社では、残念なことに今年に入ってから事故が多発してしまっている。


 この状況を鑑みて、先週の土曜日は業務終了後に安全会議なるものが開催された。


 私は土曜日には仕事をしないので、このような会議に出席することは殆どないのだけれど、今回は相棒が通院ということで仕事になったので、さすがに帰るわけには行かず、会議に出席した。


 ちなみに私は日給月給で残業代なるものを頂戴する権利を持ってはいるのだが、このように拘束された所で残業代が出るわけではない。出るはずはないので言うのも馬鹿らしく思っているし、言うだけ疲れるので、ボランティアでの参加である。


 数年前から運送業界では、運行管理のデジタル化が進んでいる。デジタルタコグラフ、通称デジタコという装置が各車に取り付けられており、これには乗用車でも普及しているドライブレコーダーも含まれている。トラックの前で立ち小便などしようものなら、記録されてしまうのだ。スピードもこの装置で管理されている。


 今回起きてしまった事故に関しても、このドライブレコーダーにその瞬間が記録されており、私達運転手はそれを見ることになった。


 高速道路で眠気を我慢しながら運転した末に起こってしまった事故、高速道路でブラックアイスバーンによるスリップの末の全車への衝突、雪道なのにわざわざ除雪の行き届いた一桁国道を迂回し、裏道に入った事によるトラック同士の接触事故、荷下ろし現場で退場する際、後方確認の甘さにより起こってしまった先方設備への接触事故、などがあった。


 特に高速道路での事故の瞬間は、思わず声が出て、顔を背けたくなるようなものだった。幸いけが人は出なかったようだが、渋滞車両最後尾への追突のケースは、追突してしまったのが10トンのウイング箱車だったのが不幸中の幸いで、これが仮に軽自動車だったら、間違いなくニュースで報道されてしまうレベルの人的被害が出てしまっただろうケースである。


 原因はスピードの出し過ぎ、眠気を我慢した事による無理な運行、雪道を無理して走行した事によるものなど様々だったが、いずれも注意すれば防ぐことができるものではある、という会社側の説明だった。


 私などはもう惰性になってしまっていて、朝出勤すれば何とも思わずに大型トレーラーに乗り込み、エンジンをかけて点検をして運行の準備をしてしまうが、この乗り物はとても大きくて、一歩間違えばとんでもない事になる危険性があるという事を肝に銘じて、気を付けて行かねばならないと気持ちを新たにした次第である。


 この先も、地球温暖化の影響で雪がとんでもなく多かったり、雪に慣れていない地域で雪が大量に降ったり、突然雨が降ってきたり、という事が起こる可能性は高くなっている。


 気を付けて、気を引き締めて仕事をしなければと思う。


 朝の出勤は6時、会議が終わったのは20時30分、残業という概念がこの会社にはない。私などはまだいい方で、400キロも500キロもの距離を帰ってきて、眠らずにそのまま会議に参加している人も沢山いる。これが現実なのである。



 

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