子機

 一応、自分の家の電話を持っている。


 こちら、今住んでいる、妻の実家に来た際には、もったいないからと言われ、妻の実家の電話を使わせてもらっていたが、生活して行くにつれていろいろと不都合が生じるので、震災の少し前に自分で別の回線を引いた。


 二階の自分の部屋の壁に穴を開け、回線を引き込んだので、そこに親機がある。そして、下のリビングに子機を設置し、これで何とかなっている。


 携帯電話が普及し、通話料金もかからない昨今、殆ど使うことはない。時々迷惑電話がかかってくるので、着信を見てその番号が迷惑電話ならブロックしている。そもそも鳴っても出ないのだから、電話ではなく、インターネットの光回線という位置づけだ。

 

 しかし最近、実家の父が携帯電話を辞め、実家の電話からこの電話にかけてくるようになった。先日も電話があったのだが、着信こそするものの、電話に出ようとしても出ることが出来ず、切れてしまうという状態になっている事に気が付いた。


 壊れたかなと思い、品番から新しい物を調べてみると、子機だけだと1万2千円位する。殆ど使わない電話の子機に、この新調費用は合わないな、と、購入は見送った。


 もしかすると他に原因があるのかと思い調べてみると、接続されているテーブルタップの箇所が何やら怪しい状態になっていた。でも、通電はしているようだ。


 二階の親機のすぐ側で、自分で電話をかけてチェックしてみると、やはり着信音はなるものの、出る、のボタンを押すと、すぐに画面が消えてしまう。


 どうやら電池に、必要な電気が充電されていないようである。


 やはり10年以上使っているテーブルタップかと思って、もう一度チェックしてみたが、やはり電気は来ているようだ。


 ということは、おそらく子機の中にある充電池が寿命を迎えているのだろう。


 またもや調べてみると、これまたびっくり、Amazonさんにて子機の充電池の汎用品が販売されていた。この手の商品、国産の名の知れた物だと結構値段が張るものだが、大陸さんとAmazonさんのコラボレーションで、990円という価格が実現していた。Amazonプライム会員なので、送料も無料でいいらしい。


 Amazonプライム会員にしても、私は昨年殆ど恩恵を受けていないと感じ、妻と相談して、今年で辞めると断言していたのだが、こうなってみると、お得なのかもしれない。


 昨晩見つけた際にはちょっと考えていたのだが、今朝起きてみて、やっぱり親からの電話には出られるようにしておかなければな、と、起きぬけにスマホで注文を入れた。発送はAmazon倉庫からではないようだったが、二日後に届くとのメールが来ていた。


 10年ほど前には、妻がガラケーの携帯電話で化粧品や服を買っているのを見て、こんな時代になっているんだな、などとため息をついていた私が、今や自分のスマートフォンで、便利に買い物をしている。


 高価なパソコンを持ち、これまた高価な専用の回線を引き、小難しい接続を設定し、これらの難しい課題をクリアした者だけが愉しめるインターネット、なんていう時代はとうに終わっている。


 いい加減、化石のような昔話はやめて、今の便利な世の中を愉しみたいという思いは少しだけあるものの、どうしても昔を思い出してしまい、心から楽しむことはできないのである。



 

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