自転車屋さんのねこ
大きなトラックに乗っていると、時々面白いこともある。
毎日業務で通っている道の交差点の角に自転車屋さんがある。
そのお店にはねこがいて、時々ご主人が外に連れ出し、柵の上のスペースにねこを置いてブラッシングをしている。ねこはおとなしい性格のようで、ご主人に言われるがままにブラッシングされているのだが、ちょっと太っていて、その様子がとても可愛い。
私もねこが好きなので、ちょうど信号待ちとブラッシングが重なった時には、ねこは可愛いな、と、じろじろと見てしまう。
何度かそんな事があったある日、ご主人も私の視線に気が付いたのか、目を合わせて微笑んでくれるようになった。
私も最初はニコニコとしているだけだったが、ねこがかわいいので、白い手袋をはめた手を振って、挨拶をするようになった。
するとご主人はねこを抱え込み、こちらにむけて、ねこの手を取って手を振ってくれるようになった。
私も更に嬉しくなり、軽くクラクションで挨拶するようになった。あまり大きな音を出してしまうと迷惑なので、本当に鳴るか鳴らないか、聞こえるか聞こえないか位の音で挨拶を返すようになった。
と、こんな風に、自転車屋さんのねこのブラッシングと、私の信号待ちが重なった時には、今でも挨拶が続いている。
先日などは、見覚えのない車が横に来て、手を振りながら私の顔を見ているので誰かと思ったら、その自転車屋さんのご主人だった。
今やらせてもらっている運転の仕事は、一度会社を出たなら、あとは約10時間、トラックの中で一人きりだ。運転の仕事など、大抵そんな感じである。
乗用車に突然割り込まれたり、信号待ちでスマホを見ている人がなかなか動き出さなくてイライラさせられたりと、大型トラックで仕事をしていても、それなりにストレスはある。
そんなストレスを発散させてくれるのが、この自転車屋さんのねこなのだ。
我が家には自転車がないので、お世話になる機会もないのだが、いつか尋ねてみたいなと、密かに思っている。
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