しまパト

 外食に出かけた。


 妻が退院してからはコロナもあり、外食は控えていた。


 久しぶりに餃子の王将に出かけた。


 日曜日、妻のパートが終わってから、三時過ぎに店に入ったが、思った以上に店の中にはお客さんがいる。私達がいつも行くお店は、元の靴屋さんを居抜きで改装したお店なので、席と席の間もゆったりと作られており、感染防止の観点からも、ここならいいかなと思い、やってきた。


 かつての妻は、ここで餃子を食べ、ビールなどを飲んでご機嫌だったのだが、それも今は叶わない。自身の病気とコロナは、すっかり私達の生活を変えてしまった。


 久しぶりに食べる餃子、広東麺はとても美味しかった。私は餃子が冷めてしまう前に、出来たての熱い餃子だけを一気に食べる。その後に広東麺を食べても、あん、が、蓋をしているのか、冷めることはなく、美味しく食べることができる。


 皆さん同じだと思うけれど、やっぱり人間、時々外に出て日頃のいろいろを発散しなければ、息が詰まってしまう。今まで義父の病気のことや、妻自身の病気のこと、義父の介護のことなどいろいろあり、ストレスが溜まっていた。そんなこともあるのだろう、以前食べていた餃子より、今日の餃子は格段に美味しく感じた。


 最後に外の自動販売機でアイスを買い、車の中で食べ、また時々来ようと話をした。


 帰り道、妻が私に服と仕事用のバッグを買ってくれるという。今日までペイペイで支払いをすると、ポイントが戻ってくるとのことで、言われるがままに車を走らせた。


 私は洋服に関してはこだわりもないし、誰かに何か言われるとか、同窓会などの行事がない限りは、殆ど服を自分では買わない。何でもいいのだ。


 向かった先は、専門店でもなく、イオンでもなく、ファッションセンターの「しまむら」だ。妻は病気後にかなり痩せてしまったので、既製品の服が着られるようになり、最近はこの「しまむら」に頻繁に出入りしているらしい。「しまパト」なる言葉もあるようで、しまむらの中をパトロールするように歩き回り、気に入った服をキープしながら、一時間以上、店の中をうろうろ、パトロールしているのだという。


 このしまむら、以前はちょっと違う感じの服が多く、買う物は靴下やハンカチなどの小物だったけれど、最近はかなりおしゃれな服が安く揃い、そしてメンズの服にも力を入れて来て、妻は私に何を着せようか、以前から考えていたらしい。


「目星つけてあるから」


 妻はそう言うと、カバンの売り場に私を案内した。


「これなんかどう?いいでしょ。安いんだよ」


 さすがに以前服を売っていたスキルがある。私は彼女に言われるがまま、仕事通勤用のバッグを買った。


 以前、私もアフィリエイトのサイトを作った事があるけれど、今、男性にも「きれいめの服」がトレンドとなっている。世界的にとても有名なデザイナーがプロデュースした服が、信じられないような価格で販売されている。


 妻はパンツをいくつか選び、私は試着室へ。


「どう?」


 妻は気が短い。私が試着室でのろのろと着替えていると、声をかけてくる。もちろん私は着替え終わるはずもなく、恥ずかしい姿が鏡に映し出される。ふざけているのだろう。


 何着も何着も試着をし、パンツを一本、トレーナーのようなものを一枚、そしてバッグを買い物かごに入れ、レジに向かった。


 レジの女性は手際よくタグを取り、レジを通し、服をたたみ、袋ご利用ですか、でもなく袋に入れる。妻はペイペイで支払いをし、これだけ安く買えたんだよとばかり、ポイント還元の画面を私に見せた。


「あのレジの人、たぶん店長なんだよ」

「レジ、早いよな。一発で畳めちゃったもんな」

「高級デパートじゃなくて、庶民の味方のしまむらだからね。だらだらやってたら、捌けないから早いんだよ」


 私の持っている服とはかなり違う感じの「きれいめな服」が、私の部屋にやって来た。次の休みは部屋を片付けて、この服の収納場所を作って上げようかなと思っている。


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