「また調子悪いよ。お湯が出ない…」


 少し前から風呂のシャワーの調子が悪く、何度か修理をしている。


 シャワー命というカミサンから、再び声がかかった。


 今回はシャワーの品番を調べ、取り付け業者用の説明書と、ユーザー向けの説明書を確認。PDFをダウンロード、印刷して、本格的に取りかかった。


 分解するのに、水の元栓を閉める必要があったので、風呂で作業している軽装のまま外に出て、冬期水抜き用のバルブを閉めに行った。


 いつかも書いたかも知れないが、このバルブは寒冷地仕様の冬期水抜き用ということで、本来なら家の中からも操作ができるようになっている。しかし、経年でジョイント部分が劣化し、外からしかハンドルが回らない。


 これを閉めて、一度家の水のラインを止めてからシャワー部分の分解となる訳だが、このバルブも何だか調子が悪い。一度閉めても水が止まらなかったので、もう一度、ちょっと力を加えて締め直すと、ゆるゆるになってしまった。ああ、この、外側のハンドルも効かなくなってしまったのである。車の整備などでもよく経験するこの絶望感は何とも言えず空しい。


 地下から生えている鉄の棒を、何とかして回さねばならないのだが、その鉄の棒は単管と呼ばれる、これまた鉄製の管で被われている。


 よく見ると、地面の辺りの単管が腐食して、少しだけ真ん中に鉄の棒が見えている。ここをネジザウスルかバイスプライヤーなどで挟めば何とか回るだろう、ということで、倉庫から工具を持ってきて、鉄の棒を咥えて回した。


 一連の作業は何とか上手く行ったのだが、地面近くの所で作業をしている際に、とんでもない量の蚊が飛び立ったのが見えた。おそらく何カ所も刺されているとは思ったが、頭の中はカミサンのシャワーを直すことで一杯だったので、対策も何もする由はなかった。


 結局は、水抜き用のバルブと、お湯の温度を制御するサーモスタットが悪いようで、これを新しく注文して取り付けることになった。


「刺されてるよ、いっぱい…。うわー 信じられない」


 部品を注文して、カミサンの横に座ると、カミサンが言った。私はかゆくも何ともないのだが、ぱっと見繕っても、顔、足、腕、いろいろな所、20カ所以上刺されているようだった。


 カミサンは自分がメインで使っているシャワーの修理で私がこうなってしまった事に申し訳なく思ったのか、いつになく同情してくれている。


 結婚してわかったのだが、カミサンと私とでは、蚊に刺された後の状況が全く違う。カミサンの場合は患部が赤い状態が何日も続き、何日もの間治らない。


 一方で私は、いくら刺されてもそんなにかゆみはなく、数時間で消えてしまう。


 カミサンは家の中に蚊がいると、執拗に追い回し、意地でも退治するが、私なんかに言わせれば、蚊の1匹や2匹は何ともなく、血ぐらい吸わせてやれという感じで、全く蚊を相手にしない。


 結婚したばかりの時はこれがわからなかった。


 カミサンは、私の顔に蚊が止まると、その蚊を殺すべく、私の顔でもどこでも手を出してくるので、放っておいてくれ、と、喧嘩になった。


 結婚して20年以上が経過し、今はそんな事もなくなった。


 カミサンは悪く思ったのか、虫刺され用の薬を塗ってくれた。私は薬など自分では殆ど塗らないのでスースーして気持ちよく、夜寝るころには、刺された痕もすっかりなくなっていた。


 今度部品を取り付ける際には、きちんと蚊の対策をして、作業をするようにしなければな、と思った。



 

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