お直し
何でもそうだけれど、自分の作品を作った後は、これは私が作りましたよ、と、何らかの印を残したくなるのが人情だ。
かつて海外に、私が自分で書いた習字を販売していたことがあったのだが、これには専用の四角いハンコを作って押していた。
確か近くのジャスコの二階にあったハンコ屋さんで作ってもらった覚えがある。安い物ではなかったように記憶している。
陶芸も同様である。
陶芸の作品を作った後は、落款(らっかん)を押したくなる。昨日これを作るべく、早速検索してみると、いくつかのお店があった。
とあるお店に当たりをつけ、もう、いろいろと考えるのも面倒なのでクレジットカードで支払いをし、出来上がりのイメージを送ってもらった。
私は古典的な、四角くて線の細い字のものが欲しかった。実際に書体のイメージ例として公開されているファイルからそれを選んで希望とした。
一時間ほどでデザインが送られて来たのだが、かなりイメージと違っている。私的には送られてきた物は漫画っぽい感じがして、心から素直に喜べるデザインではなかった。
線を細くして下さい、斜めの線はできれば使わないで下さい、公開されている中の、この文字のイメージでもう一度お願いできますか、と、珍しく自分としても結構細かなことをリクエストし、返信した。
夜中にトイレに起きた際にスマホを見ると、返事が来ていた。
粘土に押すのが前提なので、線はあえて太くしている、この字の場合はそれはないです、などなど、希望を聞くと言うよりも、専門の知識を盾に説得されている感じの内容だった。
そのお店は石に手彫りというのが売りで、強いこだわりがあるようだった。
一方で、アクリルに機械で掘って作ってくれるお店もあった。こちらのサンプルには私の望むデザインが沢山ある。
私も「申し訳ないですがかなりイメージと違います」と、かなり強い言葉を返したので、先方も「キャンセルするならお客様の方ではできませんので、こちらをお読みになり云々…」と添えてあった。
さあ、どうするか迷った。
言いくるめられたようで一瞬かちんときたけれど、お店が私の実家と近かったので、無理やり気持ちを抑え込んで、オーダーすることにした。
夜中の小便の後も、更にちょっと考えてしまい、少しの間寝ることができなかった。
翌日の朝8時、今見ると、返事が来ていた。
やり取りの文章の中に顔文字とか、ビックリマークとかが入っているので、ちょっと違うのかもと思ったりもしたが、これも何かの縁なので、こちらで頼んでみようと思った。
家や車のように高額なものでもないので、他所でもう一つ、頼んでみようかなとも思っている。
粘土に押してどうなるか、作品にどのように反映されるのか、と言うことなのだと思う。
やっていけばわかるだろう。
しかし未だにしっくりきていない。これは私にしてはかなり珍しいことだ。裏を返せば、自分なりの潜在的な主張がしっかりとあり、個性が出ていると言うことなのだろうか。
と言うことで、今晩次のお店でイメージを取ってみようと思っている。
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