お年寄りビジネス

 仕事柄、街道筋を車で走っている。


 最近ではどこの街にも大抵あるような、ラーメン屋、靴屋、カラオケ、ネットカフェ、スーパーマーケット、焼き肉屋、ハンバーガー屋、地域の特産物販売店、少し大きめの格安床屋、ガソリンスタンド、自動車ディーラー、洋服販売店、作業服販売店、パチンコ屋、パソコンショップ、携帯電話ショップ、コンビニなどを毎日眺めながら走っている。


 時間帯的に平日な事もあるのか、コロナ前からもそれ程賑わっているという感じではなかったし、例に漏れずコロナになってからは、人が少なくなっているのを肌で感じている。


 そんな中、賑わいを見せている所がある。病院やデイサービス施設などの、お年寄り、高齢者をターゲットにしている施設が、結構賑わっている。


 コンビニが閉店し、しばらくは空き家になっていた。次に何ができるのかと思いきや、デイサービス施設に改装され、開所直後から賑わいを見せている。


 どう見ても儲かっていないだろうと思っていた車の修理工場、というよりも、独自のチューニング&車検ショップが潰れ、次は何になるのかと思いきや、お年寄り相手の、何やらよくわからない物を販売しているような、ご自由にお入り下さい、を掲げた「ふれあいサロン」的なお店となった。どうやって集客しているのか、そもそも何をしているのかさえ傍目にはわからないその店に、杖をついた老人などの高齢者が、不思議かな、ぞくぞくと集まっている。


 実際に家に高齢者がいるのでよくわかるが、今の高齢者に対する日本国の支援は、ご存じない方がビックリするほど手厚いものがある。年金支給額然り、医療費補助然りである。


 一人の老人に、こんなにお金を注ぎ込むよりも、もっと今を頑張っている人たち、これからの日本を生きていかねばならない人たちへの支援の方が、長い目で見れば重要なのは、誰もがわかっているはずだ。しかし昔のしがらみや法のあり方などの問題で、なかなか上手く機能させることができず、実際の機能、仕組みが歪んでしまっているのが現実なのだろう。


 義父はとうとう透析をする事になり、その管を入れる為の管の出入り口を入れる手術をするため、本日入院することになった。もちろん一人で歩けるのだから、一人で行ってもらった。


 それなのに、一昨日はデイサービスに行き、昨日は訪問看護が来て、薬の仕分けやら、何やらをして帰って行った。デイサービスはまだしも、訪問看護なんて一回来ればそれなりの金額になるのだろうけれど、入院前日にどうして訪問看護がいるんだか、これには疑問が残る。


 透析が始まれば、80歳を超えた老人に対して、月に私の月給以上の税金が注ぎ込まれることになる。


 後期高齢者で、要介護認定がされており、ペースメーカーも入れているので、身体障害者でもある義父の所には、驚くほどのお金が渦巻いている。


 念のために申し添えておくなら、義父は毎日好きなものを食べている。食べるために家の中を歩き回り、タクシーに乗って買い物に行き、健康指導と相反する物を大量に買い込んで、冷蔵庫の中にストックする。それなのに、私たちの食べ物を無断で食べてしまったりもする。信じられない病人なのだ。


 東日本大震災の復興事業に実際に携わって、身をもって感じたことだが、税金の落ちる所に人は集まってくる。私が足を踏み入れたダンプカーの運転手などは、それこそ、北海道から沖縄まで、いろいろな地域の人がいた。


 私が仕事をしている街道筋において、一番元気なのがお年寄りビジネスとは少々悲しい気もするが、全くもってこれが現実なのである。


 日本人は無理をして前を向く癖があるけれど、日本の未来はあまり明るくないと思う。高性能なリチウムイオン電池の如く、突然墜ちるような気がしてならない。難しい問題だけれども、自分達が撒いた種は、自分達が刈り取らなければならないのだ。



  

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