あじさい

 我が家の庭は日本庭園のような感じで、庭木が植えられている。


 中央に松が二本あり、それを取り囲むように、様々な樹木が植えられている。


 義父の家系はあっちこっちに様々な伝があったようで、この家を建てる際にもその伝が最大限活用された形跡が見られる。


 照明や家電製品などは、既に他界している義父の兄が勤めていた、某大手家電メーカーのもので揃えられている。

 

 同様に庭も、この家が建てられた当時としてはそれなりの造りになっている。


 毎年葉が落ちたり、芽吹いてきて伸びたり、はたまた落ちずに伸びたりするものが殆どで、花は殆ど咲かない。唯一花をつけるのが、藤とあじさいである。


 あじさいは全く日の当たらない、隣との境界に接した、目立たない場所に密かに植えられている。いつかは伸びすぎて、隣のじじいとトラブルになったこともある。


 そんなあじさいは、一年に一度、花を咲かせて、私達を楽しませてくれる。


 大きくなるのを防止する程度の適当な剪定しかしていないのに、年々花は立派になり、今年はかなり大きな花が、沢山咲いている。


 裏には灯油のタンクがあるのだけれど、あじさいの枝が伸びすぎて、灯油の配達の人の通り道を塞いでしまっていたので、これを剪定ばさみで挟んだ。花が綺麗に咲いていて勿体ないので、そこいらにあったバケツに生けてみたのだが、もこもことして、いい感じになった。


 春先の藤と、この時期のあじさいと、一年に二度、我が家の庭は花で綺麗になる。


 藤の奥に植えられているバラも、あまりよく見えない高いところで花を付けている。


 そうそう、毎年冬の終わりにチューリップも三つだけ咲く。


 私がこの家に来た20数年前、このあじさいは花が小さく、枝も今ほど張っておらず、それほど目立つ存在ではなかった。


 毎年同じように咲く我が家の花達を、ここ最近は楽しめるようになってきた。


 雨が降り、家を出るのが憂鬱な日は、庭の影で咲き誇るあじさいを見て、元気をもらっている。


 

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