ローストビーフ

 昨日は珍しく仕事が忙しくなり、家に帰るのが遅くなってしまった。


 カミサンは既に食事を済ませていた。


 家に帰るのが遅くなると、翌日の朝の腹の調子を考えてしまい、脂っこいものや刺激物などを避けるようになっている。


 今日のおかずはローストビーフだった。こんなもの、通常の我が家の食卓のレパートリーからはかけ離れた存在のおかずだ。感覚的には、寿司や鰻よりもほど遠い所にある感じがする。


 これは、実家の親が送ってくれたもので、先日も一ついただいた。今日が賞味期限だとカレンダーに書いてあったので、やはり出てきた。


 前回食べたときは、何だか今ひとつの感じがした。扱いに慣れていないカミサンは、上手く切れない、包丁が切れないと言い、最低限のカットで食卓に上げた。


 一切れが、指一本ほどの厚みのあるその肉の塊は、お世辞にも美味しいという感じではなく、入れ歯ではない自分の歯でも、噛むのが難しい代物だった。ローストビーフってこんなもんだっけ、と思った。


 しかし今回は、前回の失敗を踏まえ、カミサンは今をときめくYouTubeでローストビーフの切り方なるものを勉強してくれたらしい。こんなコンテンツまであるのが驚きである。


 今回はYouTube様のおかげで、ローストビーフは厚さ数ミリにスライスされており、貝割れ大根も添えられ、前回と違う物になっていた。


 ソースもたっぷりとあったようで、四袋が添えられていた。


 ソースをかけ、貝割れ大根を巻いて食べてみると、貝割れ大根の苦みと、ローストビーフの食感、それにソースが相まって、とても美味しかった。前回の物と同じ梱包の中に入っていた物とは思えないほどであった。


 牛肉は、豚肉や鶏肉よりも脂っ気がなく、お腹にいいのだという。ダイエット中の食事にも奨励されているのだと、ダイエット経験者のカミサンが教えてくれた。


 普段は殆ど口にすることがなくなった肉を食べたので元気になり、今日もこうして一日を始めることができている。


 時々目先を変えて、美味しいものを食べるということは、人生において必要なのだなと、今更ながらに思った。


 お金があればの話であるけれども。



 

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