冷害

 今年は山形県の名産品、さくらんぼが不作である。


 宮城の蔵王で取れる梨は全滅に近いらしい。


 5月の大事な時期に極端に気温が下がってしまったため、霜による冷害が発生し、果実ができないのだそう。


 山形県は、さくらんぼを最大の売りにしている都道府県である。生産量は日本の約8割を生産しており、堂々の日本一。新幹線の駅にも「さくらんぼ東根」という駅があるし、かつては「さくらんぼ小学校」を作ろうとしたものの、ちょっとあっちの感じがするということで廃案になったというような経緯もある。何かとさくらんぼが登場する山形県は大変だろう。この時期、お隣の宮城県からもさくらんぼ狩りにでかける人が多く、先週は山形に向かう国道に渋滞情報が出ていた。


 先週、宮城の蔵王に遊びに行った際、梨畑の枝が伸び放題になっているのに気が付いた。我が家にある藤もそうだが、植物はこの時期、放っておけばどんどんと成長していく。


 我が家の隣町、サッカーの国際試合などがよく行われる、梨の名産地「利府町」という所でも同じだ。いつの時期でも綺麗に枝が剪定されており、空に向かって枝が伸びていることなど、今まで見たことがない。


 しかし今年は冷害で諦めざるを得なくなったからか、梨畑の枝が天に向かって伸び放題なのである。こんな光景は今まで見たことがない。


 自然相手の商売は、いろいろな面で難しいことを、改めて思い知らされた。


 虫だってやってくるだろうし、それを防止するための農薬を撒く事も、最近では憚られる傾向にあるだろう。ラニーニャやエルニーニョなどで、季節ごとの天気が安定せず、今回のように大暴れしてしまうリスクもある。


 地震、台風、水害、も心配だし、この状況ではイノシシや熊などの野生生物が、いつやって来るかもわからない。


 美味しい果物は高価だけれど、それなりのリスクをかいくぐって出荷にこぎ着けているのだから、これは仕方ないのだ。


 今回の冷害もそうだけれど、「今まで生きてきてはじめて」というような自然の災害が相次いでいる。そしてそれは今まで経験したことのない規模で、突然やってくる。


 何か保険にでも入ろうかなと、密かに考えている。



 

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