マイブーム

 カミサンには、いろいろなブームが訪れる。


 元々音楽や芸能に詳しく、事あるごとに私にいろいろな話をしてくれる。夫婦は結婚して何十年も一緒に過ごしていれば会話もなくなる、というような話をよく聞くが、我が家に限ってはそんなことはなく、この、カミサンのブームから派生する話題が夫婦の会話の中枢となっている


 かつては、山崎まさよし、イエロー・モンキーのボーカル、吉井和哉、などが好きだった。


 少し前までは、私と一緒に King Gnu (キングヌー)を応援していた。


 King Gnuは今でも夫婦で好きだが、コロナでライブ活動が制限されてしまった事などもあり露出が減ってしまったので、それに伴い、少しランクが下がってしまった。


 その次は何に行くかと思いきや、カミサンいわくクラッシックバレエの「セルゲイさん」が好きになったようで、毎日YouTubeを見たり、話をしたりしていた。私もオーケストラの構成や楽器などについてのちょっとした知識を教えてあげたりして、いつかバレエを見に行きたいね、というような話になっていた。


 しかし、この「セルゲイさん」は、長くは続かなかった。


 マツコと有吉の番組に、とあるニューハーフの方が出演していたのだが、これがきっかけとなり、今はこの方に首ったけとなっている。


 その方のお名前は、「ブリアナ」という。


 元々は地面から天井に取り付けられた「ポール」を使って踊る、回る、ショーダンサー、ポールダンサーだった彼女(彼)は、コロナで露出が少なくなってしまい、欲求不満だった。時の流れでYouTubeチャンネルを開設し、独自のメイクと話題で配信を続けていたところ、これがテレビで取り上げられてヒット。数千人だったチャンネル登録者は今、2万人を超えるという成長を見せている。


 特徴的なのは、そのメイクと喋り。各ビデオには自己紹介、いいねボタンを押して下さい、チャンネル登録をよろしくお願いします、という意味を込めた独特の「定型文」があって、簡単な振りがついている。それがカミサンのツボにはまってしまったようで、これを口ずさみながら家の中を歩いたり、家事をしたりしているので、つい私にも伝染してしまうのだ。


 かつての私は、何故、ニューハーフと呼ばれるあのような方々が存在し、テレビなどのメディアで活躍しているのかが理解できなかったが、カミサンと一緒になって、女性の考えることが少しわかるようになると、その理由が理解できるようになった。

 

 ニューハーフの方々の仕草や喋りには、男や女にはない、女性の心を捉える力があるのだ。


 ブリアナに入れ込むことは、自分の病気に加え、実の父との同居に多大なストレスを抱えるカミサンにとって、唯一のストレス解消法なのである。



「あなたの夢に、お邪魔します」


 

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