明るい兆し

 実家のオヤジから電話がかかってきた。


 お中元を贈ったからな、と私に言うと、カミサンを出せというので替わった。


 オヤジとカミサンは仲がいい。私よりは喋りやすいようである。


 オヤジの声は大きいので、隣でカミサンが私のスマホを耳に当てていてもよく聞こえる。


 エアコンの暖房が調子悪いだとか、近所の電気屋は頭に来るとか、そんなことを話していた。まだボケちゃいないが、「エアコン」の単語が出ずに、「あれあれ、何だっけ?」などと言っているので、ちょっと怪しいかもしれない。


 機転を利かせて、カミサンがワクチンの話題を振った。


 当初、行きつけの病院に電話をしたら、かなり強い口調で嫌悪感を示されたようで、可哀想になってしまった。私達の住む街では、行きつけの医者に相談してもらってもいいですよ、ということになっているが、やはり東京は人が多いのでちょっと勝手が違うのだろう。


 父と母は結局、今はお休みしている、かつてのカラオケ仲間から声をかけてもらい、今月17日と来月22日の2回分、ワクチン接種の予約が取れたとのことだった。会場は、印鑑証明や住民票を発行する業務をしていて、小規模なホールなどもある公共の公会堂。ここなら二人でタクシーで行けるし、慣れた場所なので安心だ。


 かく言う私も昨日、仕事をもらっている会社の担当の方から、ワクチンを接種した次の日は休みにしますから、ワクチン接種の予定が決まったら言って下さいね、と声がかかった。雇用されている会社ではこんな待遇は考えられないが、こちらの会社は日本を代表する大企業の下に入っている会社なので、さすがだと思った。


 この先どうなるのか、変異株などもあるので全くわからないが、ワクチン接種が安心をもたらしてくれることは確かだ。親の接種予定が決まったことと、私にも近い将来、その順番が回ってくる事を実感できたことで、ちょっとだけ安心した。


 まだまだ厳しい状況は続くけれど、感染者の数だけを見るなら、今までの対策の結果が見られる。かつてのスペイン風邪の際は、収束まで3年かかったというけれど、今回も完全な収束までには、やはりこの位の期間がかかるのだろう。


 あと少し、今出来ることを頑張ろう。


 

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