【東京都】満載うんこ電車とうんこおろし駅

 庭の野菜を育てるのに、自分の尿を肥料にしようと思いつき、実践している。


 フランスあたりでも同じような事を考えている人がいるようで面白い。


 周囲には殆ど気遣いなく散布できる環境だが、やはり立ち小便は、この環境に育ってしまった身にはそこそこ本能的な抵抗がある。


 このプロジェクトを更に進めて、自分のうんこを肥料にできないかと一瞬思ったが、これはさすがに難しい。しかし、興味があるので、ちょっと調べてみた。


 かつての日本は、人糞を畑の肥料にしていた。人がいればうんこが出る。人が多ければ多いほどうんこがたくさん出る。ほんの一世代前まで、人のいる所にはうんこが溜められ、街中をうんこが流通していた。


 東京は人が多い。排出されるうんこも桁違いだ。


 これを処理するべく、東京の某私鉄では、都会のうんこを電車に積み込んで、畑のある郊外へ運んでいた。


 国鉄は頑なにやらなかったようだが、今も野球球団を持ち、後にカリスマ経営者と言われた某氏の先代は、社会構造におけるその必要性から、この事業をそこそこの力を入れて取り組んでいただけていた。後に合併する某社と併せて二社が、今をときめく、若者が憧れる街東京にうんこ電車を走らせてくれていた。


 積み込む貨車は木製。鉄道でガタガタすれば、傷みも早い。当然漏れる。漏れなくたって臭いのに漏れたらそれは二乗に比例して臭い。


 電車は本線から分かれて、うんこ電車の荷物のうんこの荷さばき、積み卸しをするうんこ引き込み線とうんこおろし駅が、あっちこっちに作られた。


 驚くなかれ、人が乗っている貨車と一緒に、うんこの貨車が繋がれて走っていた事もあった。


 うんこ電車は発酵充分、いい臭いを漂わせながら東京の街を走る。


 乗務員、荷さばき要員、沿線周囲の方々、引き込み荷さばき場の周囲などがその臭いで大変だったであろうことは、容易に想像がつく。貨車は木でできていた。経年するとあっちこっちが劣化し、沿線にうんこをたぷたぷとまき散らしながら走っていた。この電車が来ると、踏切で電車を待っていた人たちは、うんこを被らぬように、踏切から逃げ出した。


 これはそんなに古い話ではない。私が生まれる10年位前まで、東京にはうんこ電車が走っていた。(記録上。実際にはもう少し早く終焉を迎えていた)


 今、ワクチンを打とうと頑張ってくれている人の中には、この映像を実際に見たことがある人がいるだろう。


 世界は、日本は、東京は、この一世代でとんでもない進化を遂げた。


 今、山手線や中央線や新幹線にうんこ満載の貨車を繋いで走ったらどうなるだろう。


 今の世の中は便利だけど、せちがなくて面倒くさくて疲れる。



 便利はもういらないから、おおらかなこの時代に戻らないかな。


 蘇れ、東京のうんこ電車。

 


 

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