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着信拒否設定

　夕食を終え、くつろいでニュースを見ていると、携帯が鳴った。

　この時間に電話がかかってくる事は殆どないのだが、出てみると、着信拒否設定をした人からだった。

　以前仕事で一緒で、そこそこのお付き合いだったのだが、数ヶ月に一度、思い出したように電話がかかってくる。

　悪い人ではない。でも、話は常に一方的で、私の状況など聞くでもなく、自分の状況を報告して、10分前後で切れる。

　私は自分の方針として、犯罪や勧誘などを除いては、着信拒否はせぬように心がけてきた。しかし前回、この時間にしっかりと寝て、夜中に出発と言うときに電話がかかってきて、それ以来眠れなくなり、1時間ほどの睡眠で仕事に行かねばならなくなったということがあった。

　一瞬考えたのだが、迷った挙げ句、着信拒否設定をしてしまった。

　ちょっと良心に苛まれた感もあったが、時間の経過と共に忘れていた。

　しかし、電話がかかってきた。

　電話番号を変えてまでかけてくるというような人ではないし、よく見れば電話番号は同じで、着信欄に「拒否設定済み」と出ている。何だこりゃ？

　調べてみると、端末の大元の設定をしなければ着信拒否は発動されないらしい。よかったのか悪かったのかわからないが、とりあえず着信拒否を相手に知られることはなかった。

　調べた通りに、端末の設定を変更するのも面倒臭い。結局、着信拒否はされているけれどされていないという状況のままとなった。

　彼は環境が変わったらしく、ゴールデンウィークまでゆっくりして、それからまた働きます。落ち着いたらまた、連絡しますね、と言っていたので、また数ヶ月後にかかってくるだろう。

　電話に出たくない時間に寝るのなら電源を落とせばいい事だし、彼はうだうだと喋り続けるのではなく、自分の報告が終わると大抵は数分で自分から話を終えるので、またお話しましょう、という事で、端末の大元の設定を修正するには至らなかった。

　せっかく何かの縁で知り合った人と人だ。こうして連絡をくれる人は、そう多くはない。自分の見方を変えればいいのだ。

　考えてみれば、ラインやメールなどの文字を送ってやりとりをする人は多くても、実際の電話をかけてくる人は少ない。ある意味貴重なのかもしれない。

　これでよかったのだ。今回は遠く九州からの電話だった。彼の中で私がどの辺りの位置に存在するのかは知る由もないけれど、有り難いことに変わりはない。

　また状況が変わったら、ご報告下さい。