出版した本

 春先の「もやっ」とした感じが続いている。


 朝はまだ寒いけれど、昼になると暖かくなり、長い冬をようやく抜けるか抜けないかという、もやもやと身体に湿気がまとわりつくようなこの感じ。


 まだサラリーマンだった頃、退職する直前に有給を消化させてもらい、屋久島に行った。


 いざ屋久島へ移住する事を決めたものの、仕事も決まっていなかったし、実際にキャンピングトレーラーで暮らせるかどうかが不安だった。


 一度直前に行って、仕事が決まればいいな、という思いもあった。


 ちょっと記憶が曖昧だが、安房港で親方に声をかけたのは、確かこの時である。


 仕事は簡単に決まり、実際に何日か暮らしてみて、これで行こうということになった。



 春先、このもやもやした感じになると、この時の事が思い出される。



 昨日ぼんやりとパソコンを見ていると、かつて私が文芸社から出版した本がまだあるのかどうかが突然気になって、アマゾンで調べてみた。取り扱いできません、とはなっているものの、屋久島だのとびうお漁師だのいうタイトルがついた本が、著者実名で、未だにネット上にはあった。編集者に決められてしまった感が否めない「脱サラ先は屋久島とびうお漁師」というタイトルなのだが、これで検索すると、もう販売されていない本なのにいろいろと出てくるのに驚いた。中には「買い取り価格50円」なんてサイトもあって笑ってしまった。


 人生には様々なステージがある。


 この時の私は、何を考えていたのだろう。


 後先のことは考えず、とりあえず自分の欲望のままに生きてみようと思い、移住を決断した。よくやったと思う。後悔はない。


 

 それに比べて、最近考えている事の何と悲しいことか。


 こんな文章でも毎回読んで下さる方がいらっしゃることに、心から感謝する次第である。



 東日本大震災で自宅半壊から10年、屋久島を離れて妻の実家へ来てから20年、屋久島に土地を買ってから30年が経過した。


 昨日突然エレキギターが欲しくなり、ヤマハのサイトを見てみた。突如おかしな行動に走るその気は健在だが、歳を重ね、その精度と実行力が少々衰えてきた。


 オヤジバンドは悲しいからやらないけれど、Youtubeならやるかもしれない。


 10年後にご期待あれ。



 

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