納豆泥棒

 昨日はカミサンと一緒に、宮城県の北部にある登米(とめ&とよま。地区と地域で二通りの読み方がある)という地区まで遊びに行ってきた。


 途中、かつてメダカを衝動買いしたパーキングに寄り、現在は水槽から飛び出していなくなってしまったメスを買おうかと思っていたのだが、まだ早いらしく、2匹で680円の小さなカニしか売っていなかった。


 しかし、めげることなく、この辺りの特産品である牛肉のステーキ丼を美味しくいただき、満足してドライブを続けた。


 登米というのは、次回のNHK朝の連続テレビ小説の舞台になるところである。


 今は廃れてしまった感が否めないが、かつては電車も通っており、とても栄えていた。戦時中は東京都杉並区からの集団疎開も受け入れていた。


 そんな歴史を楽しむことができる施設、宮城の明治村とも言われる所があったので、そこに行ってみた。


 かつて小学校だったというメインの建物は、今見ても斬新でとても美しい。何と1888年に建てられたものだ。そしてこれまた驚くことに、1973年まで現役で学校として使われていた。1973年といえば、私がちょうど小学生の頃である。


 きちんとコロナ対策もされており、ソーシャルディスタンスを取りながら、かつての繁栄ぶりを、カミサンと一緒に楽しむことができた。


 一通り見てから、何か買って帰ろうということになり、お土産屋さんへ行くと、美味しそうな納豆があった。


 私はカミサンが病気をしてから、納豆や豆腐、野菜やもずく、ブロッコリーなどが主食となっている。いつもはヨークベニマルというスーパーで売っている3つ50円位の、たれも何もついていない納豆を食べているのだが、美味しそうな大粒の納豆が売っていたので、これを買って帰ることにした。あまり買いすぎても食べられないので、記念にこの大粒の納豆一つと、かつて小学校で供されていたという2つ一組の納豆を買って帰った。


 家に帰り、早速納豆を冷蔵庫にしまった。


 軽く夕飯を済ませ、カミサンが冷蔵庫を開けた。


「食われてるよ、納豆…」


 驚愕である。私達がわざわざ登米市まで行って買ってきた、ただ一つの納豆を、義父は私達に断るでもなく、勝手に食べてしまった。


 これには私も頭に来て、何やら抗議をしようか、それとも何かの復讐をしようかと一瞬考えたが、カミサンはそれを察したのか、私をなだめにかかった。


「また行こうね。また納豆買ってあげるからね。あいつ、何もわからないから、嫌な思いするのお互い嫌だから、無視して放っておこうね。」



 私も瞬間的な怒りは良くないことはわかっている。でも、今回はかなり頭に来た。


 カミサンの病気の事を考え、何とかその場を我慢することができた。



 しかし、人が買ってきた食べ物を、何も言わずに冷蔵庫から取り出して食べてしまうというのは、ある意味犯罪だ。この人はかつて、犯罪者を取り締まる仕事をしていたなどというのが今となっては信じられない。


 金はあるのだから、自分でタクシーに乗って買い物に行けばいいのに、それをせずに、人の所有物を勝手に断りもなく食べてしまう。


 老害という言葉があるけれど、こんな風に困っている人は恐らく、日本中に、世界中に沢山いるのだろう。


 薬の開発は有り難いが、自然の淘汰の妨げになっているような気がしてならない。


 世界は、地球の仕組みは、どこまでも歪んでいる。


 いろいろな所で不平等を感じるのは、私だけではないはずだ。


 くそ。

 

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