ウィキペディア

 同級生や知り合いの中で、一人だけ、ウィキペディアに載っている奴がいる。


 万が一、ご本人がこれを読むようなことがあっては失礼だから、奴ではなくて、人である。


 地元の友人なので、中学校の同級生だ。中学生の時はもちろん、卒業してからも一緒にバイクの免許を取ったり、車の免許を取ったり、その都度うれしくてあっちこっちにでかけたりした仲の友人。彼のご両親は既に他界してしまったが、親同士も付き合いのあった、唯一の地元の友達だ。


 何を隠そう、私が田舎暮らしに目覚めてしまうきっかけは、彼とのモータリゼーションキャンプである。原付に乗り、バイクに乗り、車に乗り、全国各地に一緒に旅行をした。


 屋久島にも来てくれたので、前にも書いたかもしれない。


 その彼から今年は年賀状が来なかったので心配していた。ようやく昨日着いたのだが、良く見ると、彼にあるまじきことに、住所が少しばかり間違えていた。年賀なのに12月30日の消印が押印されていたので安心した。


 彼は地元を離れて大都会もいいところの新宿に暮らしている。年を重ねるにつれて、地元が懐かしくなってきているようで、私の実家の近くにできたスーパー銭湯に通っていると書かれていた。そういえば、インスタグラムに子供と一緒に通っているみたいな事が書かれていた。


 おそらく友人の仲では一番遅く子供を授かったので、まだ子供は小学校に入ったか入らないか位だろう。


 もちろんスマホの電話帳に入っているので、インスタやラインはわかってしまっている。だけど、頻繁に連絡する仲ではないよな、との判断をどこかでしているのか、この手の手段で連絡は取っていない。


「今年こそ会おう」とお互いに言いつつ、最後に会ってから20年が経過してしまった。


 東京の新宿には、今はさすがに行けない。


 このパンデミックが収束したら、久しぶりに連絡を取ってみようかなと思っている。


 彼のオンの仕事はとても華々しいもので、今の私とは無縁の釣り合わないものだが、多感な時代を一緒に生きた仲、友情は、一生ものだ。親同士も繋がっていたので、同級生以上である。


 最近になって彼は時折、仕事の公式ライティングの中で、望郷の念を見せる場面が増えてきた。


 その思いの中に、私の存在もあるのかもしれない。


 今年は思い切って、連絡してみよう。



  

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