エラー「4の点滅」

 元日の朝、起きてみると、何だか変だった。


 いつもなら義父が張り切って雑煮を作っているはずなのだが、義父は台所にいない。電気の燈き方も変だ。


 風呂と給湯に使っているボイラーのコントローラーを見ると、いつもと様子が違う。


 普段は義父のエゴで最大出力の9にて運転されているのだが、今日は4の数字が点滅している。昨晩は凍結の恐れがあったので、Fという凍結防止モードにして寝たはずなのだが…。


 義父にとって、給湯器から出てくるお湯は必須。基本的に自分勝手なので、お湯がなければ何もしない。


 きっと、給湯器が壊れて動かないため、雑煮作りを中止したのだろう。間違いない。


 私がボイラーのスイッチを弄くりながら状況を見ていると、義父が出てきた。やはり私の想像した通りで、直らなければ業者を呼ぶからと正月早々平気で言う。


 全く、自分で直そうなんて事はこれっぽっちも思わない人で、元旦だろうが何だろうが、自分の気に入らないことがあれば電話を手にとって電話しまくり、相手の事など何も考えずに口で物事を解決するのが得意な人だ。正月から呼び出され、修理をする側の気持ちになってみなさい。誰だって、一月一日は休みたいものだ。自分はデブで金があるから、こんな風になってしまったのだ。正月から全くおめでたい。


 ということで、修理開始だ。


 取り扱い説明書を見ると、エラーの4の点滅は、燃料関係のエラーである。


 外気温マイナス4度の中、外に行き、ボイラーと対峙する。回したことのないネジを回し、とりあえず中身を見てみる。燃料が来て、基盤があって、タンクがあって、わからないことはないけれど、詳しくはわからない。


 マニュアルに水抜きをしなさいとあったので、ボイラー本体にある燃料供給ラインの水抜きのバルブを開けてみたのだが、何も出てこない。タンクの水抜きバルブも同じだ。おかしいな。


 ネットの情報なども見ながら、わからないなりに原因を考え、格闘すること、約90分。


 当初は一応気が張っていたので、それ程感じなかったが、外気温はおそらくマイナス4度くらいのままだろう。足の先や指の先の感覚がなくなり、さすがに寒くなってきた。


 答えがわかった。


 ここ最近にはない寒さで、燃料タンクに僅かに溜まっていた結露水がタンク下か供給ラインの途中で凍結してしまい、燃料が供給されなくなってしまったのだ。だから、本体の水抜きバルブを捻っても、何も出てこなかったのである。


 燃料タンク下の燃料供給ラインを外してみると、ライン内からは灯油が出てきた。一方で、タンク側からは何も出てこない。ストレーナーという濾し器がある部分、ここが凍っているのだろう。


 早速、タイヤに空気を入れる時に使うコンプレッサーを持ってきて、エアーで圧力をかけてやると、凍結していたものがなくなったようで、灯油がしたたり落ちてきた。


 配管を繋いで、本体の水抜きバルブを捻ると、今回は配管内のエアーがぶくぶくと出てきて、次に燃料が出てきた。エア抜き完了である。


 

 再発してはいけないと、ここの仕組みをいろいろと勉強する。燃料タンクから燃料が出てくるストレーナーという部品があり、本来なら燃料の濾過と、結露した水を溜める役割をしているのだが、この部品が古くなっており、取替の必要があった。インターネットで調べ、何とかまだ部品はあるようだったので注文しておいた。


 今年はラニーニャの影響で、まだまだ寒い日が続くようだ。念のために、今回凍結してしまったこの部分を毛布でぐるぐる巻きにし、灯油タンクの足回りに塀を作って、温度が下がらないようにしておいた。水は今回で殆ど出てしまったとは思うが、こうしておけばしばらくは安心である。



 終わると一息つく暇もなく、カミサンが買い物に行きましょう、と言うので、スーパーに買い物に出かけた。カミサンは何度も何度もお正月から修理をしてくれてありがとうと言ってくれたので救われた。


 一方で、この機械に一番依存している義父からはお礼の一言もない。そればかりか、修理のお礼もさておき、ひょうひょうと本来なら医者から止められている風呂に入ると言い放つ。あの人がお金を出して、天下り先の退職金の一部でリフォームした風呂だから私には何を言う権利もないけれど、修理した事に何のお礼も言えないばかりか、約束を破って自分勝手な振る舞いをする事自体が許せない。


 まあ、とにかくボイラーの故障は直すことができたのでよかった。今年もいい年になるようにがんばろう。



 

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