役職定年

 東京トヨタに勤めていた時、友人は沢山いた方だと思う。


 同級生はもとより、本社にいて、現場の人たちからの電話を受けて処理していたこともあって、各地区に仲のいい人がいた。


 時はバブルだったので、しょっちゅうお呼ばれして、酔っぱらっていたのも、今となってはいい思い出である。


 年に一度、鬼怒川や熱海、遠くは西伊豆あたりまで、社員旅行に行くこともあった。これは現場営業所毎に行われていて、多い時には年に3回も4回もお呼ばれして、温泉旅行に行っていた。宴会にはコンパニオンが来たり、部屋のビールを飲んべえが飲みつくしてしまい、幹事を困らせたりして、いろいろと面白かった。


 こちらへ来た当時はまだ、ナンバーポータビリティーの制度ができておらず、携帯電話の電話番号を変えてしまったこともあり、殆どの方とは縁がなくなってしまった。今の仕事柄、実名本名でFaceBookをするのもはばかられているので、級友から連絡がくることは殆どない。


 そんな中で一人だけ、本社時代の同級生、厳密に言うと、入社は一年後で大卒なので、年齢的には3つ上の友人とだけ、年賀状のやり取りが続いている。


 東京はトヨタの販売店が一緒になってしまい大変だというのが最近のトピックだった。


 その彼の年賀状に今年、「役職定年になりました」と書いてあった。


 定年なんてまだまだ先だと思っていたのもつかの間、時代は確実に流れていて、サラリーマンの同級生たちも、やがて次々に定年を迎えるのである。


 役職定年って何だと調べてみると、役は外れるけれど、会社にはいることができて、収入は2-3割減ってしまうとあった。


 人それぞれ考え方があるとは思うけれど、私はこの程度の収入減で会社に勤め続けることができるのなら、とてもありがたいじゃないですか、と思う。もちろん、保険、年金、税金は今まで通り会社が手続きをして、給与から天引きしてくれるのだろうから、楽勝じゃないかと思うのだけど、当事者としては大変な方もおられることだろう。


 彼は独身で、実家暮らしで、性格もおとなしく、遊び癖もないので、おそらく老後の貯えもしっかりとしていると思う。


 年を取ってしまっても、贅沢をせず、健康ならば何とかなる。ますます大変な世の中になって行ってしまうが、自分を見失うことなく、今年も一歩一歩進んでいきたいと思う。



 


 


 

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