麻酔
「全身麻酔と局所麻酔が選べますけれど、どうしますか?」
選べると言ったって、これは結構大変だ。
カミサンは先日の手術の説明で、このような選択を迫られた。
それ程考えることなく、リスクが少ないからと、彼女は局所麻酔を選んだ。
「俺なら全身麻酔だな。眠ってれば終わっちゃうじゃん」
うかつな発言だった。カミサンは自分の身体を考え、リスクを最小限にとどめるために選択した結果を否定するような感じになってしまった。
「身体に負担が少ない方がいいでしょ!」
少々語気強めで、カミサンはそう言った。申し訳なかった。
カミサンは先日、手術当日に立ち会ってくれる仲の良い友人と手術前、最後の食事をしてきた。その会話の中でもこの話題になり、友人は「全身麻酔」を選んだという。
「二人してまったく、同じなんだから」
「そりゃ、楽だからな」
「だから身体に負担が少ないの。リスクが低いんだよ!こうやって、口から管みたいなのを入れてぎゅうぎゅうやるから、歯が取れちゃうこともあるんだって!」
「そうだね、ごめんごめん」
私は40年位前、盲腸の開腹手術をした際には局部麻酔だったが、患部を取り出す際、とても気持ちが悪くなったのをハッキリと覚えている。誰でもなるから大丈夫だよ、と、医者にあらかじめ言われていたが、かなり気持ち悪かった。そんなこともあって、全身麻酔が選べるなら選びたい、なんて思ってしまうのかもしれない。
入院、手術が近くなって、カミサンは少し緊張しているようだ。何とか支えてあげねばと思う一方で、このような彼女の神経を逆なでし、ストレスになってしまうような発言は、避けなければならない。
カミサンは冬になると、電気毛布の薄いものを敷き、暖かくして寝ている。元々寒さには弱く、こうしないと寝ることができない。退院する日は、誰も立ち会いがおらず、自分で会計を済ませて、タクシーで帰ってくる段取りになっている。しかしその日は一年で一番寒い位のレベルで寒いらしく、カミサンは今からビビっている。
帰ってきたらすぐに布団に入って寝ることができるように、私が会社に行く際、電気毛布のスイッチを入れ、布団を暖めておいて欲しい、と、まだ正式にではないが頼むようなことを言っていた。
私は電気毛布の習慣がない上、これを点けっぱなしにすると火事になってしまうんじゃないかと心配で、当初は少し顔に出てしまった。
しかし、義父もいるし、電気毛布は毎晩使っていても何ともないので、これは私の考えすぎと言うことで、依頼があったら、快く引き受けてあげようと思う。
何の病気であれ、入院して手術をし、家を留守にするのは、誰にとってもいいものではない。彼女は既に脳の大病をしており、その上でなので、なおさらだ。
何とか頑張ってほしいものである。
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