白鳥

 我が家の近くには川が流れている。

 

 東日本大震災時には津波が逆流し、逆流津波が一つ海寄りの橋にぶち当たり、飛沫が大きく跳ね上がった。


 大雨になると時折り増水するが、少し上流で突然川幅が広くなり、逆にカーブしていることから、構造上、我が家の近くはそれほど危険ではないと言われている。


 河川敷はとても広い。堤防の上にはサイクリングロードが整備されており、太平洋まで行くことができる。我が家の近くのエリアには雑草が被い茂っていたが、半年くらい前から重機が入り、造成だか治水だかわからないが、土を入れて平らな地面を作っている。水の流れはいじっていないようだ。


 また、カミサンの母方の実家は、代々地域を代表する大きな農家である。今は家が建ち並んでいるが、かつてはこんな建造物などなく、殆どが田んぼや畑だった。跡継ぎでがんばっていたおじさんは若くして亡くなってしまい、私達と同年代の次の跡取りは農家を継がず、サラリーマンをしている。


 震災後に、田んぼを埋め立てて、一戸建てや団地クラスの復興住宅が建てられ、主に東側の海沿いで被災した方々が引っ越して来られた。


 しかし、穀倉地帯は広大で、大都市ではあるが、かなりの広さの田んぼや畑が今も残っている。


 冬になると、ここに白鳥がやって来る。


 引っ越してきた当初は驚き、感動したものだ。今でも、青空に白鳥が編隊を組み、独特の声で鳴きながら飛んでいるのを見ると、心が落ち着く。


 大抵は5-8羽位で飛んでいるが、時々どういう訳だか一羽で鳴きながら飛んでいるのもいて、自分みたいでなかなか面白い。


 白鳥は、メインの居所は川だが、餌を捕るために、夜が明けると稲刈りの終わった田んぼに飛んで行き、夕方になると、川に戻って来る。


 我が家は川と田んぼの間にあるので、これからは毎日、朝晩、白鳥が鳴きながら飛んでいるのを見ることができる。


 コース取りにもよるけれど、かなり低空の時もあって、後ろ足を伸ばして収納しているかわいい姿が見えたり、羽根が風を切っている音が聞こえたりする。


 ここには、屋久島とはまた違った自然が、今も残っている。


 開発などはせず、このまま次の世代に残して欲しい。


 自宅には大きな庭もあるし、もう、東京には戻らないだろうな。



 

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