文学賞
芥川賞と直木賞が発表になった。
屋久島にいた頃、とびうお漁師の仕事はカッコ良かった。移住してすぐの月に30万円をもらい、これで生活して行けるだろうと思ったが、現実は厳しかった。
海が時化れば仕事がない。組合の生産調整などで休みになることもある。捕れすぎると値段が下がる。捕れなければお金にならない。
苦肉の策で考えたのが、漁の最後に配給されるおかずのとびうおを通販でお裾分けするという、「とびうおお試しセット」だった。漁師の稼ぎの他に、少しでもお金を稼がなければ生活して行けないだろうな、という危惧があった。
今、いろいろと言われているマーケティングなんて、大ざっぱで、考えてもいなかった。ただ、毎日Webに日記を書いていれば、読者さんが集まってくれて、何とかなるかもしれない、位の気持ちだった。
今思い出せば、まずまずの成果だった。
しかし、注文が来れば忙しくなり、魚を捌いたり箱に詰めたりするのは一人ではそれなりに大変で、それに加えて日記を書いたり、掲示板投稿への返事を書いたり、田舎暮らしの相談メールなんかも来たりして、今から考えれば、身体への負担がそれなりにあったかもしれない。
こんな事をやりながら、一方で、自分のこの暮らしを本にして、作家、エッセイストみたいな活動ができないかなと、いつも考えていた。
とにかく原稿用紙100枚書こうと、今までの暮らしを原稿用紙にまとめ、屋久島の安房にある文房具屋さんでコピーを取ってもらったのを覚えている。コピーはすぐには稼働せず、スイッチを入れてから暖気が必要だった。
内容はまあ、たいしたことはないし、結果も当然出てはいない。そんなに甘いもんじゃない。
結婚してこちらへ来てからも、何か書いて暮らす事への憧れというか、執念みたいなものがあり、何度か文学賞に応募した。
これもまあ、たいしたことはなく、結果など出るはずもなかった。
結局自費出版することで気持ちにケリが付き、今はこうしてここ、カクヨムさんに毎日投稿させていただく日々が続いている、というか、はじまった。
文学賞の中でも有名な、芥川賞と直木賞の受賞発表は毎年二回あり、必ずメディアで取り上げられる。かつては「俺もいつかは」と思ったものだが、今は「次が大変だぞ」なんて、いっちょ前に受賞者を心配しちゃったりしている。
でも何か、面白いことないかな、と、いつも考えている。
人間として生きて行けるのも、あと20年位だ。
死ぬまでにもう一度、面白いことが出来たらいいな。
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