書籍化あり


 本を出したい。



 20年前、屋久島で書いていた時に、強烈な願望があった。



 どうすれば出版できるのかを考えながら、毎日日記を書いていた。


 日記猿人に登録して、上位に食い込めれば何とかなるかもしれないと思い、頑張って書いていた。


 上位の常連になるには、毎日更新するのがいいだろうと、素人ながらに考えて、毎日更新した。


 取材に来てくれたフリーのライターさんに、出版の伝がないかと詰め寄って、嫌がられたりもした。


 結局、自分の力で、費用をかけずに本を出版する事はできなかった。



 屋久島を離れてからも、屋久島時代の生活を本にしたい気持ちに変わりはなかった。当時は朝早くて夜も遅いタンクローリーの仕事をしていたが、やはり過去の何とかが忘れられず、時々思いにふけったり、懲りずに運転手の日常を発信したりしていた。今のようにプラットフォームも整っていなかったが、トラックにノートパソコンを持ち込んで、イーモバイルで繋ぎ、それなりにやっていた。


 かつて雑誌の編集長をしていた同級生や、屋久島時代、よく世話をしてくれた、本屋を営んでいる方などから情報を収集し、願わくば出版へと繋げてやろうと目論んだけれど、素人の出版はそう簡単に叶うものではなかった。


 こうなれば強硬手段、奥の手だと、自費出版で有名な某社の広告から最終アプローチをかけた。いい返事が来た。もちろんだ。相手は商売だ。


 100万と当時の手取り給料一ヶ月分+位のローンを組み、ついに私は本を出した。タイトルにも内容にも編集や校正が入り、気にくわなかったが、編集者に悪いので、「いい物ができましたね、ありがとうございました」と、嘘をついた。


 その本は100万円超での約束通り、実家近くの書店の棚に、しばらくの間、実際に陳列されていた。今住んでいる地域の大きな本屋にも、一応並んだ。


 この文字を書くためだけに、私は100万以上を費やした。



 20年という月日が経過してわかったことがある。商売においては、何をするにおいても自分のことばかりを考えていてはダメで、それをすると相手、お客さんはどうなのかを常にイメージしなければならないという、とても簡単なことだ。


 出版したって、実際に本が売れなければ、業界のためにはならない。


 売れる見込みのある本を書いて、作って、本屋に平積みされて、実際に売れるならいいけれど、そうでなければ、ただ、自分のエゴであるだけだ。多額の費用が必要となるのは当然なのだ。


 自然の摂理である。



 今、ああしたい、こうしたい、という、具体的な希望はないけれど、例えば、King Gnu の常田大希が、売れるための曲を書く方法を米津玄師に教わり、実際に曲をチューニングしてヒット曲を生み出しているのと同じで、少しは考えて書かなければ、ビジネスとしてやって行く路線に乗せることはできないだろう。


 まあ、今はかつてのような強烈な情熱もないし、適当にやってみますので、これからもどうか皆様、よろしくお願いいたします。



 

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