カシータ

 屋久島からこちらへ来たときに、携帯電話の番号を変えた。


 以前は今のようなシステムがなく、ドコモ東北の契約にするなら、電話番号を変えなければならなかった。


 あっちこっちへ転勤したり、仕事を変えたり、屋久島に行ったり、いろいろとあったので、以前の私の電話帳には120件ほどの登録があった。ドコモ東北の契約に変更する際、ドコモのお姉さんに「電話帳の件数多いですね」と言われて、そうなのかなと思った。20年以上前のことだ。


 でも、私の方からは相手がわかるけれど、私は電話番号を変えてしまったので、かつての友人が私に連絡を取ろうと思っても、もう、電話をする事ができない。今はメールやラインがあるのでいいかもしれないが、こんな風に便利になる前は、電話番号はかなり重要だった。


 という事があるので、屋久島の時の友人が私に電話で連絡を取ろうとしても、繋がらないようになってしまった。以前は「屋久島のとびうお漁師はトレーラ暮らし」というHPがあったので、そこからメールのリンクがあったのだが、今はこのHPもサーバー代が払えずに閉鎖となってしまった。


 電話番号を変え、こちらに来てからも、HPを通して知り合いになった方がいる。田舎暮らしや屋久島、キャンピングカーでの暮らしが素晴らしいと言って下さり、九州在住にも関わらず、何とこちらまでわざわざ出向いていただき、お会いした事がある。


 この方の電話番号は、私のスマホに入っている。ドコモ東北になってからの番号なので、双方から繋がる状態だ。


 私が遊びでインスタグラムのアカウントを開設すると、すぐに彼から反応があり、フォローが入った。このシステムには驚いた。


 私がかつて住んでいたキャンピングトレーラーは、カシータという名前のものだったが、このキャンピングトレーラーが、今、どこかで売りに出されているらしい。


 カシータは丸っこく、その形が独特で、人を惹き付ける魅力がある。売りのページには、内装の写真も出ていたが、この中で猫と暮らしたり、魚を捌いたり、HPを作って毎日日記を書いたりしていたんだなと思うと、今更ながらに感慨深かった。


 彼も自身のインスタグラムで、「カシータ欲しい、お金が降ってこないかな」と言っていたけれど、やはり彼にも、屋久島と私といろいろと関連した想い入れがあるのだろう。他の方々にこれだけ影響を与えてしまったのは、いいのだか悪いのだか。


 カシータはアメリカのテキサス州で製造されている。かつて1$が360円の時代に、カーステレオで大もうけしたと豪語する社長が運営する、とある小さな輸入代理店から買ったのだが、その代理店は既に扱いを辞めており、その後はトランキルグローブという名前で、しばらくは、神奈川県の代理店から販売が続けられていた。今はどうなっているのか、ちょっとわからない。


 いつの日か、私が再び手にして、もう一度ランクル40と一緒に日本各地を旅してみたい、と思うだけで少しゾクゾクする。でも、よっぽどの事がない限り、残念ながらそれはないと思う。


 ランクル40の維持もおぼつかない最近だけれど、何とかこれだけは墓場まで持って行こうと、気持ちを新たにした次第である。



 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る