第二章 魔導書と異国探訪

飛ばされました

あれ……私……どうしたんだっけ……


眠りの中で記憶を整理する。


確か……学校が乗っ取られて……それで、私の魔導書が狙われてて……


あっ、飛ばされたんだ。この魔導書の魔法で。


うーん、眠くて起きれない……


—————————————————


「それじゃ、森の見回りお願いね。」

「はーい、いってきまーす。」


週初めは、必ず森の見回りに行く事になっている。凶暴な動物やらが来ていないか確認するためだ。


その見回りが、今週回ってきたのである。


「なんでこんな事しなきゃいけないんだよ……魔法の練習したいのに……」



見回り、と言ってもただ決められたルートを回るだけなので、そこまで辛くはない。


何かが居なければ、の話だが。


「うぅ……何も居ませんように……」


そう祈るしかなかった。


ガサガサ…

何か音がする。


「!?何何何!!?」


音がどんどん近づいてくる。


「わぁぁあ!!」

「あぎゃあああああああ!!!!」

「へへへ、驚いたー?」


どうやら人間のようだ。それも知り合いの。


「何だよイリアか……お、脅かすなよ……本気で怖いから……」

「ごめんごめーん。

今日はリットが見回り担当だって聞いたから、来ちゃった」

「誰から聞いたんだよ……」


その後、2人で森の見回りをする事になった。


「何にもないねー、面白くないなー」

「面白くなくていいでしょ……」


見回りも終盤に差し掛かった頃。


「ねぇねぇリット、あれ何?」

「あれって?」

「ほらあれよ。人の形した何か」


イリアが指さした方を見てみる。


あれは……人……?


「イリア、行こう!」

「うん!」


—————————————————


あれからどれ程眠っていたのだろうか……


大体私は何処へ飛ばされたんだろう……


そろそろ起きないと……


眠っていながら様々な事を思案する。



「……ますか……」


どこかからうっすらと声が聞こえる。


「…………聞こえますか……」


人の声だ。良かった、人は普通にいるみたいだ。


起きろ……私……!!


—————————————————


「聞こえますか!!」


必死に声をかけるが、なかなか目を覚まさない。


「死んでないよね……?」

「分からない……」


生きていてくれ、そう願うしかなかった。



「んー……」

「起きた!?」


ようやく目を覚ましたようだ。


「あれ……ここどこ……」

「良かったぁあ!!!」

「な、何!?」


イリアが泣きながら叫んでいた。余程怖かったのだろう。


—————————————————


私はようやく目を覚ました。


「良かった。少なくとも死んではいないようだね」


少年がこちらを向き、そう言った。


「僕はリット。こっちは友達のイリア。」

「イリアでーす、ごめんね、急に叫んだりして。」


見る限りは同い年のように見える。


「私はナギサ。ミラルで魔法学校に通ってる」

「えっ!?あの魔法使いクロエさんの作った!?」


2人して食いかかってきた。


「う、うん。そうだよ。それで、ちょっと色々あって今ここにいるんだけど……」


私は事の成り行きを2人に話した。


「それでここまで来たのね…」


イリアが頷く。


「そう言えば、ここってどこなの?」

「ここは、『エイト王国』だよ。そして、ここが『憂いの森』。」


待って、私、森で寝てたの!?

道理で背中が痛い訳だ…


「とりあえず、私達の村に来なよ。ここで話ってのもあれだし」

「うん。ありがとう」


—————————————————


聞くところによると、この村はエイト王国では1番小さい村らしい。住んでいる人は50人くらい。


学校も一応あるにはあるらしい。


私はリットの家にお邪魔することになった。


「お邪魔しますー」

「どうぞどうぞー」


中はしっかり整理されていて、私の家より遥かに綺麗だ。


「しばらく親はいないし、ゆっくりしていきなよー」

「ありがとー」


リットの親は出張でしばらく居ないらしい。


「ねぇねぇリット、ミラルってどの辺にあるの?」

「なんでイリアまでいるんだよ…」

「いーじゃん。それに私の親もいないんだし、今日はこの家に泊まることにするー」

「いやまぁね……いいけどさ……」


先程から思っていたのだが、この2人は男女なのに仲が良すぎる。少なくとも私の学校ではこのような光景を見たことがない。


……まぁその辺はどうでもいいが。


「ミラル王国は、地図で見るとこの辺り。」


リットが指さした地図を見る。


そして私は絶望した。


「遠っ!?えっ!?」

「エイトからはかなり遠いね……

徒歩でも1ヶ月以上掛かるかな……」


まじですか。


「なんてこったい……」

「あっそうだ。確か4つ隣の『ケイト王国』に繋がる転移ホールがもうすぐ完成するって言ってたよ。」


何故皆大事なことを前に言わないんだ。


「どのくらい先?」

「うーん、1、2週間先って言ってたような……」


これはもう待つしかない。


「じゃあ私、転移ホールが出来るまで待ちたい!」

「良いよ。多分親も帰ってこないだろうし」


よっし。これで移動手段は確保出来た。


「ありがとう、リット。」

「うん。

あっそうだ、待ってる間、僕達に魔法を教えてくれない?」

「もちろん!でも、私まだ魔法使い見習いだけど大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。それに、あの『クロエの魔導書』を持ってるんでしょ?だったらきっと大丈夫!」


まさか私が教える側になるとは、数日前の私は思ってもなかっただろう。



無事にミラルへ帰れるかどうかはまだ私には分からない。


この先何があるかも分からない。


けど、少しずつ、前へ進んで行こう。





追記:親がいないのに朝誰に声をかけられたかは考えてませんでした()

とりあえず知り合いの誰かって事にしておいて下さい((

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