いざ実践

魔導士修行を始めて数週間後の事。


「ナギサさん、だいぶ魔導書を使いこなせるようになってきましたね」


そう、今私は、闇系の魔法ほぼ全般と、癒し系魔法を少しだけ使えるようになった。


「まぁ闇系の魔法が使えた所で使う場面はほぼないと思います。このご時世に戦争なんて起こらないと思いますし」

「確かに言われてみればそうですね」


私達は、まだこの魔導書が作られた理由をまだ知らない。ハイジ先生が幾つか仮説を立ててみたが、すべてレールさんに否定された。


「まあ使用用途は少ないと思いますが、覚えていればいずれ役立つ時が来るでしょう。」

との事。


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今日の夜。


今日のメニューが終わり、帰宅。


「ただいまー」

誰もいないので、声が響き渡る。


さて、ご飯食べるか…

そう思った矢先。


「ガサッ」


誰もいない筈なのに、謎の音がした。


本でも崩れたかな?あんだけ汚く積み重ねていたから、1冊や2冊落ちても不思議ではない。


自分の部屋の電気を付ける。すると…


「あっ…」


なんだ、こいつら!!


黒ずくめの、いかにも怪しい奴が居た。


「逃げるぞ!」

「待て!!」

逃がすものか!


急いで魔導書を取り出す。


「ブラックフィール!」

この魔法は、この辺りを暗くし視界を遮る為の魔法だ。当然、私も見えなくなる。


「何!?」

黒ずくめの誰かが叫ぶ。

「落ち着け!ただの停電だ!」

いや、違います。


ブラックフィールの効果が終わった。

私も見えないながら多少は動いていた。


「うわっ!眩し!」

そう零しても仕方あるまい。瞳孔が開きまくってるんだから。


「フォース!」

結界を張る。これも効果はあまり長続きしないが、あるだけましだろう。


「あなた達、なんで私の家に不法侵入してんの?」

「お、教えねぇし!」

そう言いながら結界を叩いてる。

「無駄だ、ジェイ。この結界はそう簡単に破れるものじゃない」

ジェイと呼ばれた男は座り込んだ。

「わかったよ、レイ。」

もう片方はレイと言うらしい。

「それで、目的は?言わないと解放しないわよ」

「ひえぇ…怖い…」

「お前、こんなんで怯えてたら戦場で真っ先に死ぬぞ」

「もー!教えないと出さないわよ!」

つい声を荒らげる。

「ほう、上等だ。ならばこちらも対抗して見せよう。」

そう言ってレイは少し間を置いたあと…



「お願いします!!何でもしますから、どうか私たちを解放してくださいまし!!」

全力過ぎる土下座だった。今までの人生で見たことも無いし、多分今後の人生でも絶対に見ないような。

いやもう、あっぱれですわ。はい。


「わかったわ。但し、目的を教えて?」

レイは深呼吸をした後言った。

「実は私たち、『クロエの魔導書』を探しておりまして、こうやって民家を回ってる訳でして。」

「だからって不法侵入するなよ」

「はい…それはもう本当に申し訳ないです…」

「いいよ。じゃあ、魔導書あげるからさっさと帰って。」

「あ、ありがとうございます!」


なんて単純な奴らだ。

実は私が渡したのは、それっぽい本だった。何も疑問を持たずに持ち去っていった。


さて、今度こそ夕飯食べるか…


—————————————————


「違う!これは『クロエの魔導書』ではない!」

「「えぇー!?」」

「何故こんな簡単な嘘にも騙されるんだ貴様らは!!」

「も、申し訳ありません!アル様!」

「もう二度とこんな不手際がないようにします!なのでお許しを!」

「もういい。貴様らは無限砂漠行きだ!永遠にな!」

「ええーーーー!!覚えてろあの小娘めーー!!!」


—————————————————


「なんか寒気がしたんだけど」

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