魔法修行なう

「あのー、今これ何やらされてるんです?」

今、私は壁に寄りかかって逆立ちをしている。かれこれ10分ぐらい経ったので吐きそうだ。

「体力作りだ!」

「あ、そうですか…」


なんやかんやあって魔導士修行は始まったのだが、コミュ障すぎるレールさんととにかく熱血指導すぎるハイジ先生のもとではまともに魔法なんて学べるものではない。



「よっし、今日のトレーニングはこれぐらいにしておくか」

ようやくこの過酷な体力作りは終わった。く、苦しい…


「さーて、お次は魔法力だねー」

やっと本題に入った気がする。てか体力作りのトレーニングってやる意味あったのか?


「魔法力修行は、この本を使ってやるぞ」

そう言って先生は本を手渡してきた。タイトルは、「オーガの書 極」…

「先生、これって…」

「そうなのよ。オーガっていう、上級魔法使いが書いた魔法修行にぴったりの本よ。」

違う、そうじゃない。

「これって『極』って書いてありますけど、上級者向けの本じゃないんですか?」

「えっ!?嘘!?」

どうやら気づいていなかったらしい。


「…うーん、見たところ大丈夫そうだけと…」

レールさんがそう言う。

「良かったー、この本結構高かったから、無駄になる所だったよー…」

ちゃんと確認してから買いましょう。本当に。

「ナ、ナギサさんは得意魔法って何かありますか?」

レールさんが聞いてきた。

「え?いや、まだないです…」

「それなら丁度良いです。この本はダーク系魔法について詳しく書かれているので、ダーク系魔法が使えるようになると思います…」

ダーク系ねぇ…。まぁ悪くはないよね。

「では早速、始めて行きましょうか…」




「そう言えば、魔法を使う時の掛け声って何かないんですか?いい加減『ソイヤ』は飽きたので…」

ふと気になったので聞いてみた。

「掛け声ですか、そうですね…

基本的には魔法によって言い分けているので、決まったものは特にないかと…」

「そうなんですねー。じゃあ、その辺は自分で考えますわ。」

「でも、必須という訳でもないので…」

そうだったのか。じゃあ今まで学校は何を教えていたんだ…



一言に修行、と言っても主に魔法力を上げるだけなので、継続的に魔法を使うだけである。

これを繰り返す事により、自分の潜在能力に気づいて、自由に操れるようになる、とレールさんは言っていたのだが…


「じゃあ、今日の所はこの辺にしておきましょうか。」

レールさんが言った時、もう既に5時を回っていた。

「今日みたいな調子で頑張れば、2週間程で効果が見込めるかと…」

2週間?早いな。

「あ、そう言えば明日から学校なんですけど、終わった後に来ればいいですかね?」

「はい、いいですよ。」

「わかりましたー、じゃあ明日もよろしくお願いしますー」


明日から学校、憂鬱だー…


—————————————————


「何!?クロエの魔導書が見つかったって!?」

「はい。どうやらミラルで見つかったようです。まだ誰が持っているか分かりませんが…」

「馬鹿!!阿呆!!そんなのさっさと突き止められるだろう!!」

「は、はい!!」

「さっさと行け!!そして魔導書を奪い取って来い!!!」

「わ、分かりました!!」



未だナギサは、あのような悲劇が起こることを知らない——

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