〈マッスル40〉 最早何でもありの世界観

「さくモン、なんて事するの!? 風炉島さんは、ブロッコリーが好きなだけで、おっぱい神を脅かす存在なんかじゃないわ……! 亜房先生だってそうよ……! 確かにポッキーみたいだけど、彼も無害よ!」


 私は叫んだ。


「萌ちゃん……。落ち着くのですよ……。がぶっ!」


 あれ? 今、なんか咀嚼音がしたぞ……?


 私は、地面に倒れた風炉島さんを見た。


「テメェら、完全にブロッコリー神を怒らせたな? がぶっ!」


 風炉島さんは、銃で撃たれながらも、何事もなかったかのように立ち上がった。その手には、やはりブロッコリー。


「なっ、なんで動けるんだ……!? 確かに命中した筈だぞ……!?」


 さくモンは驚く。私も、状況が分からない。確かに風炉島さんは撃たれた。少なくとも、私の目にはそう見えた。


 だが、その謎はすぐに解けた……。


 風炉島さんの体から、一つ、ブロッコリーがポロっと落ちて来た。簡単な事であった。ブロッコリーのフサフサの部分に、銃弾がめり込んでいたのだ。


 ブロッコリーが、風炉島さんを守ったのだ。


「よくも……ブロッコリーを粗末にしやがって……。がぶっ! がぶっ!」


 一瞬で、手元のブロッコリーを2口も齧った……! 私でなきゃ見逃しちゃう……!


「さくモン、ここは一旦引くのです……! おっぱい神でも、正気を失ったブロッコリー神には敵いません! ツユウ……! あなたも、我らと共に逃げるのです!」


「い、嫌よ……!」


 ツユウさんは、陸様の誘いを断る。


「まさか、おっぱい教が人殺しをするなんて思わなかったわ! おっぱいは世界を救うんじゃなかったの!?」


「ツユウ……我は本当におウタを殺してなどいないぞ!」


「私は、このおっぱい村が好きだからこそ、あなた達に協力しているのよ。でもあなた達は、会費など言って村人から金を巻き上げては、全ておっぱい費に注ぎ込むじゃない……!」


 おっぱい費とは?


「それに、私は、萌ちゃんみたいな可愛い子を騙したり出来ないわ……! あなた達がおっぱい教なら、私は、たった今からmoemoe教よ……!」


 はぁ〜、ツユウさん、私のガチ勢じゃん!


「さくモン……! こうなったら、もう二人だけで逃げるわよ!」


「ぱい……!」


 二人は諦め、逃走を図る。


 しかし。


「おい、待てよ……!」


 突然、えなりかずきに似た声が聞こえてきた。この声は、間違いない。


「あ、バカ……! 生きていたの!?」


「萌様、今、わたくしに向かってバカと言いませんでしたか?」


 おっぱい堂入り口に、無江警部バカが立っていた。


「あの貧乳好きの男……! ど、どうやって独房から逃げ出したのです!?」


「ハッハッハ! 引っかかったな!?」


 無江警部バカの背後に、巨大な筋肉の影が現れる。間違いない……!


「デジル!」


 私は、彼の名を叫んだ。


「あの筋肉も……一体、どうやって独房から出たんだ!?」


 さくモンは、不思議そうな顔をしている。


「同じ筋肉同士、そんな事も分からないのかい? 鉄格子は……筋肉で捻じ曲げたのさ!」

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