〈おっぱい37〉 物語始まって以来、ついに死者が出ちゃう

 いよいよ今日から、おっぱい教の一人として本格的な修行が始まる。昨夜は、ほとんど眠れなかった。夜中に、何処からかギシギシと金属音の様な物が響き、怖かった。おっぱい宿舎はボロいから、幽霊でもいるのだろうか? だから試しに耳栓をして、おっぱいの数でも数えてみたけど、おっぱいの数が一向にどんどん増えて行くだけで、全然眠るには至らなかった。


 スマホのアラームが鳴る。


 やっとウトウトして来たと思ったら、もう朝だ。適当に身支度を済ませ、早速、おっぱい宿舎を飛び出した。


 朝は、おっぱい堂にて、おっぱい神へ祈りを捧げなければならないのだ。


 まぶたは、半分閉じたまま。


 頻繁に欠伸を繰り返し、私は、無心でおっぱい堂までの道を歩く。


 気のせいでなければ、おっぱい堂の前に人集りが出来ている。


 なんじゃろ?


 ちょうどその時だった。


『……して……おウタさん……!』


 あれ……今の、ツユウさんの声?


 おっぱい堂にあるマイクが、ツユウさんの声を拾ったのだろうか? 恐らく今、おっぱい村全体に彼女の声が聞こえているだろう。


 昨日の、謎のラジオの様に……。


 なんだか、ツユウさんの声、慌ただしい感じだったな。


 私は、おっぱい堂の入口に集る村人を掻き分け、中へと入って行った。


「う、うそっ!?」


 人集りを抜けると、とんでもない光景が映り込んだ。


 なんと、真っ黒ブーメランパンツ男のおウタが、太いロープで首を吊っていた。手足の力は完全に抜けた様子で、誰がどう見ても死んでいた。


 よっぽど苦しくて、顔が真っ黒になってしまったんだと思ったけど、よく考えたら、彼は最初から日焼けで真っ黒なのを私は完全に忘れていた。


「ツユウさん……!」


 天井からぶら下がったおウタの真横で、呆然と立ち尽くしているツユウさん。


 その隣には、さくモンもいた。


「おウタ……! くそっ……!」


 さくモンも悔しそうな表情をしている。


「ツユウさん! 早く警察を……!」


 私が声をかける。


「そ、そうね……!」


 ツユウさんは、我に帰る。


 ツユウさんが、スマホで警察を呼ぼうとした時だった。


「待つのです……!」


 あ……!


 この尊い声は……!


 振り向くと、おっぱい堂の入口に陸様が立っていた。


「り、陸様……! おウタさんが大変です……!」


 ツユウさんが叫ぶ。


「狼狽えるでありません、ツユウ……。警察など不要です……。残念ですが、彼は自殺……。警察の手は必要ありません。必要なのは……おっぱいだけです! おっぱぁぁぉい!!!!」

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