〈おっぱい35〉 ツユ☆ステ

「あ……!」


 驚くおウタ。慌てた様子で、私達から何かを隠した。


「おい、おウタ! お前……まさか!?」


 さくモンは、何かを察した様子で、おウタが大臀筋だいでんきんの下に隠したをすぐに引っ張り出した。


「う、嘘……!?」


 私も、思わず声を上げてしまった。さくモンは、顔から汗が噴き出ている。おウタ本人に至っては、顔が真っ青だ。


「お、お前……正気かよ……」


 さくモンが手にしていたのは、一冊の本。


『褐色太ももコレクション』


 それは、褐色太もも専門のエロ本であった。


「すまん、さくモン……! つい魔が差してしまったんだ!」


「おウタ……! 謝って許される事じゃないだろ!? おっぱい教でありながら、太もも!? しかも、褐色太ももだって……!?」


「ど、どうか陸様には内緒にしてくれないか……!」


「陸様の目を誤魔化せる筈ないだろ! これは大罪だ! 下手したら死刑だぞ……!」


 おっぱい教では、他の部位を愛する事は許されない。神は、おっぱいのみに宿る。


「褐色おっぱいが好きなんじゃなかったのか……。まさか、褐色太ももだなんて……。とりあえず、その本はすぐに燃やすんだ!」


「わ、わかった……」


 おウタは、大きな溜め息を吐いた。


「萌ちゃん、醜い物を見せてしまってゴメンね。この話は一先ず終わりにして、行こうか……」


「ぱい……」


 後味が悪かった。まさかいきなり、こんな修羅場に遭遇しようとは。さくモンも口をすっかり閉ざし、私を『垂れ乳の間』へ案内すると、「明日、朝8時におっぱい堂集合ね。おっぱぁぁぁい!!!!」とだけ言い残し、足早に去って行った。


 私は、狭い部屋で一人きりになって、なんだか急に寂しくなる。


「私以外に入会者もいないし、デジル達とも別れちゃった……」


 デジルの筋肉、亜房先生の脆さ、風炉島さんの咀嚼音、無江警部バカのウザさ。さっきまで一緒にいたのに、もう懐かしく感じてしまう。


 なんだか気分をスッキリさせたかった。


 私は、おっぱい宿舎を出て、村を散策する事にした。少しは気分が晴れる筈だ。


 日は、暮れ始めていた。


 日中とは違った、おっぱい村の姿が広がる。


 ところで……新たな出会いとは案外偶然だ。


 それは、おっぱい堂へと向かう途中だった。今回も突然に……。


『ツユウの……みんなのおっぱい拝みたい♪ はい、じゃあ今日もツユ☆ステの時間がやって参りました! 早速、コーナーの方に参りましょう!』


 おっぱい堂から突然、大音量で怪しいラジオが始まった。しかし、何者かは知らないが可愛い声だ。


 私は、歩きながら謎のラジオを聴く事にした。

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