〈おっぱい32〉 おっぱいの魔法

「そうか、残念じゃ……。それでは、これよりあなたは、おっぱい神の裁きを受け入れなければならない……」


 陸様は、無江警部バカを冷酷な目で見下ろしている。羨ましい。私も、見下ろされたい……。


「さくモン……! その男の手を縛るのです!」


「はい、陸様!」


 陸様の一番弟子であるさくモンは、無江警部バカの背後へと回り込んだ。そして、無江警部バカの背中側で、両手をロープで括り始める。


「痛ッ!? な、何だよ……!?」


 鍛えられたさくモンの肉体。


 おっぱい教に入れば、筋肉も手に入るのだろうか? さくモンの筋肉の前では、無江警部バカの抵抗は微々たるもので、全くの無意味だった。


「10秒後……おっぱい神の魔力により、あなたは微睡まどろみへと落ちます……。3……2……1……」


 ちょうど、陸様のカウントが終わった時だった。


 あれだけ威勢が良かった筈の無江警部バカが、糸が切れたかの様に膝から崩れ落ちた。


 え、凄い……!?


 ほぇ〜!


 今のって、魔法!?


「可愛そうな青年ですね。貧乳しか愛せなくなったとは……。しかし……おっぱい神は、愛の様な存在。おっぱいに対する考えを改めれば、きっと、再びチャンスをくださるでしょう! おウタ! この者を、集会が終わるまで独房の中に入れておけ!」


「ぱいよ!」


 突如、陸様の背後から真っ黒な人間が現れた。日焼けしてるのか? 歯と、蛍光色のブーメランパンツだけが異常に目立っている。


 さくモンと同じく、陸様の弟子のようだ。


 おウタと呼ばれる真っ黒男が、眠ってしまった無江警部バカを軽々と抱え、何処かへと連れて行く。


 おウタも、さくモン同様にムキムキだった。


「ありゃ、無江警部が連れて行かれましたね! がぶっ!」


「助けに行かなくていいの?」


 亜房先生も不安そうだ。


「無江警部は、この集会が終わったらボクが引き取りに行くよ! ところで、今のが魔術なのか……?」


「え!? まさかデジル、陸様の力を疑っているの!? 彼女の力は、きっと本物よ……! おっぱい神の生まれ変わりなのよ……!」


 私は、陸様を全力で擁護する。あんなに尊いお方が、ペテン師な筈が無い。


「そうかい……。ボクは、何を信じるかは、本人が決めればいいと思っている。だから、萌ちゃんが彼女の能力を本物だと思うならそれでいいさ!」


「本物よ……! 絶対本物よ! おっぱぁぁぁい!!!!」


 私は叫んだ。


「決めた! 私、今日からおっぱい教の人間になる! 招待状に、今なら入会金無料って書いてあったよね!?」


「ああ。確かに、書いてたね!」


「うん、入る! おっぱぁぁぁい!!!!」


 頭の中は、すっかりおっぱいでいっぱいだった。

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