〈おっぱい31〉 無江の性癖

「おっぱぁぁぁい!!!!」


 陸様の声と共に、おっぱい堂は歓声に包まれた。十人十色の我々人間が、おっぱいで一つになった瞬間である。


「はぁ〜、陸様ぁ〜、ほんま尊いわ〜」


「も、萌様……!? 突然どうなされたのです!?」


 いけない。


 つい、私の心の声が漏れてしまった。無江警部バカが驚いた顔をしている。


「あ、い、いや! ちょっと惚れてしまったかも……」


「わたくしにですか、萌様!?」


「うるさい! はぁ〜、陸様ぁ〜、おっぱぁぁぁい!!!!」


 私、決めた。


 おっぱい教をこれからは信じる。おっぱいは世界を救う。筋肉が正義の時代は終わったんだ。


 おっぱいこそが正義なんだ。


「世界中のおっぱい民達よ! 今日は、皆に会えて大変喜ばしいぞ!」


 陸様、なんて素敵なんだ。


「人の数だけおっぱいがある……。しかしそれは、大きな間違いなのです!」


 なん……だと……!?


「おっぱいは一人に二つ! つまり、おっぱいの数は世界中の人々×かける2が基本原則となるのです……!」


 お、おお……! それは盲点だった!


「しかし、それは基本原則であり、おっぱい聖書の第4章に詳細がズラリと記載されています。各々、しっかり目を通していただきたい! そして、今日の本題はズバリ……『みんな違ってみんないい』がテーマです」


 陸様の言葉で、ザワザワするおっぱい堂。


「みんな、自分のおっぱいに手を当て、そして考えて欲しい。今、あなた方の隣に座っている人間のおっぱいの形、大きさは果たして一緒か? 答えは簡単だ。もちろん、みんな個性がある。時に、貧乳や巨乳と言った派閥が生まれ、争いが起こる事は、非常に残念で仕方ない。隣人のおっぱいを愛せよ。今一度、この言葉の意味を考える時ではないだろうか?」


 その時だった。


「意義あり!」


 錯覚じゃなければ、私の隣から声が聞こえた気がする。無江警部バカが、大声を張り上げ、突如立ち上がった。


「おっぱいは、貧乳こそが正義だぜ! 巨乳なんて俺は認めない……!」


 無江警部バカに、全ての視線が集まる。


「おっぱいは、全て平等であるぞ!」


「いや……。おっぱいは、控えめこそが最高だ!」


 何故か口論が始まった。


「では、巨乳を嫌う理由を問おう!」


 陸様も、無江警部バカの意見に引き下がらない。


「以前、巨乳の彼女と付き合ったんだが、夏場……予想以上に谷間が汗臭かった! それが、俺が巨乳を嫌う一番の理由だ……!」


 お前、巨乳の皆さんに謝れ。


「さくモン……。あの男を前に連れて参れ」


「はっ!」


 陸様の側近である金髪ブーメンランパンツ男が、無江警部バカの元へと近付いて来る。


「陸様の一番弟子、さくモンと申します。自称14歳美少女のおっさんです。さぁ、私と共に前に来るのです」


 自称14歳美少女のおっさんって何だよ。陸様の弟子は、変な人だった。


「あ!? 何だよ!? 貧乳好きを認めないってのか!?」


 無江警部バカが、さくモンと呼ばれるおっさんに無理矢理立たされた。そして、陸様の立つ教壇の前へと連行される……。


 いいな。近くで陸様を拝めて。


「無江警部、大丈夫かな?」


 亜房先生が心配そうに眺めている。


「頭は大丈夫じゃないでしょうけど、なんとかなるんじゃないですか? がぶっ!」


 風炉島さんは、いつもの感じでブロッコリーに夢中だった。


 そう言えば思い出した。ブロッコリーには、ボロンと言う物質が含まれる。女性ホルモンをサポートをする働きがあり、バストアップを期待出来る。「おっぱいボロン、ブロッコリー」と、語呂合わせにすれば覚えやすい。


 つまり、ブロッコリーも本質的には、おっぱいなのだ。略して、ブロッぱいである。


「今一度問うぞ? あなたは巨乳を認めず、貧乳だけを愛すると……?」


「ああ……! 男に二言は無いぜ!」

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