最終章 おっぱい殺人事件

〈マッスル30〉 おっぱいよきいてくれ

 にゃおぱれす殺人事件から1ヶ月。


 亜房先生の全身骨折は治った。牛乳を沢山飲んで、小魚を沢山食べたらしい。


 私は今、デジルに連れられ、東京郊外のとある村にやって来ている。私の他にも、亜房先生、風炉島ぶろしまさん、無江警部バカの3人も一緒に連れられて来た。


 この村の名前は、おっぱい村。


 つまり、おっぱいだ。


 数年前から過疎化が進み、消滅するのは時間の問題だと思われていた。しかし、そこに一人の救世主が現れたのだった。


 おっぱい教の教祖を名乗る陸二りくじと呼ばれる人物が、不思議な魔力と、おっぱいの力で、村に人々を引き寄せたらしい。


 現在、少しずつではあるが、活気を取り戻しつつあるとの話だ。


「お、アレだな!」


 デジルが前方を指差す。


 周囲にぽちぽちと建っている木造の家と比べ、さぞかし立派な建造物があった。随分と新しい。一般的な、体育館ぐらいの大きさはある。そこに、私達同様、全国各地から今日の為に訪れた人達が吸い込まれていく。


『おっぱいよきいてくれ』


 先週、デジルのマッスルタワーに一枚の招待状が届いたのだった。それが全ての始まり。


『人はおっぱいに始まりおっぱいで終わる! 隣人のおっぱいを愛せよ! 今なら入会金無料! 教祖 陸二』


 怪しい宗教だった。


 しかし、デジルは一味違った。おっぱいを探求すれば、より立派な大胸筋を得られるチャンスだと思ったらしい。何かのヒントになるかもしれないとの事で、見学だけでも行こうと言い始めたのだ。


 そして、それが今日。


「おっぱい教か。興奮してきたな……」


 無江警部バカは、何を想像しているのか随分と楽しそうだ。


 建物の入口に、『おっぱい堂』と看板が立て掛けてあった。


 いよいよ私達は、怪しさ満点の建物へと入る。


 椅子がズラリと並べられていた。集まった人々は、既に1000人は優に越している。前の方は、完全に席が埋まっており、私達は、中央後ろ寄りの席へと、四人並んで座った。


 壁に、『おっぱぁぁぁい!!!!』と書かれた掛け軸が飾ってある。


 一体何が始まるんだろ?


 他に集まった大勢の人は、老若男女様々だ。きょろきょろと辺りの様子を観察していたその時……。


「諸君……! 静粛に!」


 突如、マイクを通して大きな声が聞こえて来た。


 前方にある祭壇の横からだ。金髪で、ブーメランパンツ姿のおっさんだった。ムキムキだ。


「間も無く、陸二様がご登壇なさる! 気とおっぱいを引き締め、くれぐれも無礼がないように!」


 一気に静まり返るおっぱい堂。


 そして、祭壇の奥の方から、僅かながら人影が見えてきた。


 コツ、コツと、足音がリズム良く聴こえてくる。


 祭壇の上へと登った。


 彼……いや、彼女は、美しい模様の入ったローブを身に纏う、それは言葉に表せない程に美しい女性であった。


「皆の衆……おっぱぁぁぁい!!!!」


 おっぱい教……。


 教祖 陸二……。


 その姿は、あまりにも尊かった。

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