〈マッスル26〉 金子
「夏井ちゃんパンチ!」
夏井さんが、
「金子さんって誰よ!? 絶対違うわ……!」
夏井さんが言う。
恐らくその通りだ。金子さんなんていないのだから。
「いや、ダイニングメッセージの可能性は十分にある……! ただ、そうだとすれば不自然だな……。なぜ首がポロされる間に、本をきっちりと折る猶予があったのか? 亜房先生が残したメッセージは完全な物なのか? この本一冊で全ての謎が解けるのか?」
デジルが、色んなポーズを決めながら、何かを語り始めた。
「萌ちゃん。おかしいと思わなかったかい? 君は、亜房先生の頭が置いてあったと言った。しかし、体についての言及は一切無かった……。あの短時間で、亜房先生の体をどこかに運ぶ力がある人間が、にゃおぱれすの2階にそもそも上がれるかな? いくら彼の体が軽いからと言って、そう簡単に出来る事じゃない……!」
そうだ。確かに体は無かった。
亜房先生の頭部が、床に置かれているだけだった……!
「萌ちゃんに、あと一つ聞きたい事がある。血の痕は、あったかい?」
私は、ハッとした。
そう、あの部屋で感じた違和感。殺人現場にしては穏やか過ぎたのだ。血痕なんて無かった。
私は、可愛い亜房先生の頭部だとしても、怖くて直接凝視は出来なかったけど、周囲に血の一滴すら見当たらなかった……!
「じゃあ、亜房先生は生きている! 間違いないよ」
え……!?
生きている!?
亜房先生は、頭部だけでも生きていられるの!?
「簡単なトリックだよ。この、にゃおぱれすだからこそ可能なんだ。亜房先生は、首がポロったんじゃない! 床に、首の位置までめり込まされていたんだ……!」
「え、どう言う事!? なんでそんな事をする必要が……!? じゃあ、亜房先生は、死んだ振りをしていたって事!? 何の為に!?」
まだ、私は話の全貌が掴めない。
「
「い、いえ……。特に隠している事は……」
「これだけ見た目は立派なお屋敷だ。もちろん不良物件だがね……! 一応、金庫の一つや二つ、あってもおかしくないでしょ?」
「え……。き、金庫ですか? 一応、私の自室にありますが……」
「犯人は金子さんじゃない。これは、金庫と伝えたかったんだ。素人が短時間で考える暗号など、一番シンプルな可能性から絞るのが手っ取り早いのさ。違ったら、また別の視点で考えるか、他にヒントを探せばいい。だが何故……こんな
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