〈マッスル20〉 首月 ぽろろ

「いやぁ……ブロッコリーが体全体に染み渡るね。最高の料理だ! 筋肉が喜んでいる……! 亜房先生は、勿体ないね……。なぁ、萌ちゃん?」


「うん、そうだね……。まぁ、亜房先生だから仕方ないよ……」


 デジルは、スクワットキープをした状態でブロッコリーを食べている。因みに林田さんは、やはりサイドプランクの状態でお酒を飲んでいた。


「この人達全員、珍獣か何かかしら? 筋肉岩や首ポロ様より記事になりそうな人達ね……」


 夏井さんも呆れている。


「珍獣だと? 他のみんなと一緒にしてもらったら困るぜ? 俺は、萌様を守る騎士ナイトだ」


「夏井ちゃんパンチ!」


「ぐあっ!」


 無江警部が、殴り飛ばされた。いいぞもっとやれ。


 そんな中、くろつちさんが戻って来た。


「久しぶりに賑やかですね……」


「そう言えば、車椅子の少女はどうしたんだね? 彼女も、ここへ連れて来ればいいのに」


 万鳥まとりさんが言う。


「ぽろろ様は、以来、一切言葉を喋らなくなってしまいました……」


「あの日って?」


 私が尋ねる。


「ぽろろ様は、ご家族でお出かけの際、事故により両親を同時に失いました……。彼女は、その時の怪我で両足と声を失っています。義足を付けてはいますが、歩けないようでして、現在は車椅子生活です。もう、あれから5年は経ちましたかね……。私は、首月くびつき家に支える執事として、今でも、ぽろろ様と、この屋敷にゃおぱれすを守っているのです……」


「な、なんて辛い話なんだ……!」


 林田さんが、サイドプランクしたまま泣いている。泣上戸か。


「彼女は、それ以来、心を完全に閉ざしています。救ってやりたいのですが、私には力不足のようでして……」


「力不足だと?」


 デジルが立ち上がった。


「ここには一体、何人の筋肉業界の人間がいると思っているんだ!? ボク達の筋肉を合わせたら、必ずぽろろちゃんの笑顔を取り戻す事ができる……! さぁ、呼んで来てくれ! 一緒にニートゥチェストをやろう!」


「バカじゃないの!? デジル、失礼だって!」


 私が暴走したデジルを止めにかかる。


「ありがとうございます……。お気持ちは嬉しいですが、この屋敷にゃおぱれす内で激しい筋トレは恐らく不可能です。もう一つ、お話しする事があります……」

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