〈マッスル19〉 亜房先生は間違い無く総受け

「かんぱぁぁぁい!!!!」


 林田さんが、一目散に酒を喉の奥へと流し込んだ。あんなに豪快に酒を飲んだら、首の筋肉を痛めてしまうぞ……。


「わーい、ブロッコリーだ! わーい! がぶっ! がぶっ! がぶっ!」


 風炉島ぶろしまさんも幸せそうだ。彼女は、ブロッコリーが存在している世界に生を授かり、本当に良かったと心から思う。


「ふぅ、お腹一杯だよ……」


 ブロッコリーを貪る風炉島ぶろしまさんとは対照に、亜房先生は、お腹を摩って苦しそうだ。


「え、亜房先生!? もうお腹一杯なの!?」


 私は驚いた。


「ブロッコリーのお刺身の……蕾を一つ食べたらお腹一杯になっちゃった……」


 亜房先生正気なの……!? ブロッコリーの蕾一つで満腹って……!? 青虫でももう少し食べれるでしょ!?


「あら、食が細いのですね……」


 くろつちさんも驚いている。食が細いの次元ではない。


「なんだか眠くなって来ちゃったよ……」


 亜房先生は、欠伸をしながら目を擦る。お腹一杯になって、眠くなったのだろう。可愛らしいな。


「2階に、女性のお客様専用の休憩室があります。そこで、お休みになられては如何いかがです? 1階だと、宴会の声が煩いでしょうから……」


「いいの……? ぼくが使っても? ぼくだって、これでも一応男の子なんだからね……?」


 同人誌の様な台詞だ。


「女性のお客様の為と言うのは少し語弊があったかもしれません……。正確には、2階は、体重45キロ未満の方専用の部屋なのです。因みに貴方は、何キロです?」


「ぼくは、38キロだよ」


 私より軽いな。


「それでは問題ないですね。ご案内致します」


 亜房先生は、夏井さんに借りたグリム童話の本を片手に、涅さんに連れられて部屋を出て行った。


 それにしても、体重制限がある部屋なんて初めて聞いたな……。

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