〈マッスル16〉 えなりかずきへの風評被害
謎の建物まで、30分程歩いた。木々を掻き分け、筋肉達は途中でスクワットをしたり、木にぶら下がって懸垂を始めたり。
要するに筋肉達は、やりたい放題だった。
かなり時間を無駄にしたが、無事に到着。
それはもう、立派な館であった。一体誰が、何の為にこんな地に建てたのかは不明。外観は、壁中を
「人、住んでいるのかな?」
私がボソッと呟いた。
「入り口からあの辺まで、一直線に草が無い。人間の出入りはあるみたいだ。それに、地面に車輪の跡があるだろ? まだ新しいな!」
確かに……。
じゃあ誰かが住んでいるのか。
「ごめんください、誰かいませんか?」
無江警部が扉をノックする。静かな森に、ドンドンと叩く扉の音が響き渡る。ところで、無江警部の声で私が気づいた事がある。イケボなのだが、どこかえなりかずきに近い声質なのだ。
「お? ドアが壊れたぜ、デジル!」
なんと、無江警部がドアを打ち破ってしまった。
お前も脳筋か!
「無江くん、力を入れ過ぎたんじゃないか? 手加減を知るんだ! 脳筋か!」
テメェが言うな。
「いや、俺は
「お前限り無く死ね!」
私は、無江警部に厳しいツッコミを入れる。中途半端な厨二で、しかも、何故私の大ファンになってるんだよ。えなりかずきの事が嫌いになりそう。
「お邪魔するぜ……」
無江警部が一番最初に中へと入る。エントランスには、灯が点っていた。やはり、人が住んでいるようだ。
「すみません! 誰かいませんか!? 助けてください! それからあと、何かタンパク質をください!」
デジルの声が館の中を木霊する。図々しい筋肉だな。何も……反応が無い?
そう思った時だった。
「ようこそ、私の……いえ、私達の住むにゃおぱれすへ……」
正面の扉が開き、そこから二人の女性が姿を現した。その一人が、車椅子に乗った少女を押している。車椅子の少女は、視線が定まっておらず、生きている感じがまるでしない。
「人が来るのは、久しぶりですね」
「筋肉岩ツアーの途中でバスが事故してな! 迷ってしまったのさ!」
「成る程……。助けを呼んであげたいところですが、こんな山奥だと連絡の手段が無いんですよ。今日はもう日が暮れます……。明日にでも、街へ通じる道へと案内します。今夜はぜひ、ゆっくりされてください。これも何かの縁ですので、おもてなししますよ……」
「酒だ酒だぁ! かんぱぁぁぁい!!!!」
林田さんが歓喜の声を上げる。
「面白い筋肉達ですね……。さあ、みなさん中へどうぞ……」
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