〈マッスル6〉 酒とプロテインと事件の始まり
「更に、
「昼間から酒だぁ! かんぱぁぁぁい!!!!」
顔を真っ赤にしている筋肉が、ビールジョッキ型プロテインシェイカーを持っている。既にアルコールに支配されているらしく、筋肉業界の人間とは到底思えない。
全員キャラ濃すぎだろ。筋肉業界ってこんなのだったの!?
「さぁ、イツメンが揃ったぞ! 早速、日頃の疲れなど忘れて、プロテインをシェイクしようではないか……!」
その言葉を合図に、皆がプロテインシェイカーの蓋を一斉に開けた。
「今日も、沢山の種類のプロテインを準備した! 水や牛乳も、好きなだけ使ってくれ! ルアンくんが今日も率先して準備を手伝ってくれたんだ! さぁ、始めよう……」
皆、目の色が変わった。これより、未だ謎に包まれているお茶会が始まるのだ。
「万鳥おじさんも、紅茶味がいいんでしょ? アタシが入れてあげるわよ」
「ありがとう……姐さん」
朋岡さんと万鳥さんは、紅茶味のプロテイン。朋岡さんが、万鳥さんの分までプロテインをシェイカーに入れ、牛乳を注いで渡す。
「うぉぉぉおおお!!!!」
そして、朋岡さんは野太い声で、勢い良く自らのプロテインをシェイクし始めた。上下にブォンブォンと、今にも衝撃波が発生しそうな程だ。
それとは対照的に、万鳥さんはマドラーを使い、静かに、優しく、お洒落にプロテインを混ぜる。私の経験上、プロテインは絶対にあんな混ぜ方だと駄目だ。最後は、溶けきれていない粉が、口の中でじゃりじゃりと暴れる。
「酒だ酒だぁぁぁ!!!! かんぱぁぁぁい!!!!」
林田さんは、カルピス味のプロテインに、持参した缶ビールを一本注ぐ。それではまるで、バーで見かけるダブルカルチャードだ。楽しそうにジャンピングスクワットをしながら、リズム良くプロテインをシェイクしている。
「萌ちゃんは、何味がお好きなのかしらぁん?」
ルアンさんが、ねっとりとした口調で私に尋ねて来る。
「わ、私はココア味が好きです……! いつもは牛乳で割っています!」
「あら、そうなのねぇ! じゃあ、私が混ぜ混ぜしてあげるわよぉん」
おい、言い方。ルアンさんは、怪しい鼻唄を歌いながら、ココア味のプロテインをスプーン一杯、低脂肪牛乳をシェイカーに注ぐ。
蓋をし、混ぜ混ぜが始まった。
「はい、まーぜ、まーぜ、まーぜ……うぉぉぉおおお!!!!」
最初は優しく振っていたのに、後半になると本性を現したのか、朋岡さん同様に、凄まじい勢いでプロテインをシェイクし始めた。
こちらも、今にも衝撃波が起きそうな程に。
「はい、愛情たっぷり込めたわよ? 遠慮しないで飲んでね」
「あ、ありがとうございます……」
プロのオネェ筋肉がシェイクしてくれたプロテインを受け取る。私は、早速一口。
「お、美味しい……」
「でしょ?」
ルアンさんは嬉しそうだ。私の言葉は嘘ではない。混ぜ方次第で、ここまで舌触りが変わるのか。
「萌ちゃん! おやつに、ササミ、ゆで卵、それからブロッコリーもあるから、遠慮なく食べてくれよ!」
デジルさんが、私の目の前に山盛りのブロッコリーを持って来た。
「い、いただきます!」
ブロッコリーに手を伸ばそうとした瞬間だった。
万鳥さんが、大胸筋を押さえて苦しみ始めた。
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