〈マッスル4〉 つべこべ言わずにブロッコリー食えよ
建物内は、かなりゴージャスだ。
サイドチェストのポージングをしている、純金のデジル像が入り口に飾ってあった。屋内なのに噴水があり、心落ち着くBGMも流れている。
実に開放的な空間だ。
そして、エントランスには受付嬢がいたので、私は躊躇なく彼女に話し掛ける。
「あのぉ、デジルさんに招待されて来たのですが……」
「尊田 萌様ですね! デジルさんから、話は伺っています! お茶会の場は11階です! がぶっ!」
受付嬢は全てを言い終えると、何故かブロッコリーを齧った。ブロッコリーは、ビタミンが豊富なのは勿論、テストステロンが含まれている。それは男性ホルモンの一つで、女性ホルモンの一つであるエストロゲンとは反対の性質にある物だ。
ブロッコリーと筋肉の相性は素晴らしい。
しかも彼女は、生のままブロッコリーを齧っているのだ。茹でれば水溶性ビタミンが流出する分、生で食べるのはより健康的である。
しかし、何故彼女はブロッコリーを今食べる?
今食べなくてもいいんじゃないか?
きっと、彼女にしか分からないブロッコリーへの執着があるのだろう。
「おや……マッスルスタジオに、可愛らしい女性が来ているのは珍しいじゃないか……」
突然、背後から渋い声が聞こえた。私は振り返る。
「
「いつも言っているじゃないか、
タバコの臭いと、何処と無く紳士の香りもする男だ。
「万鳥さん、この方も今日のお茶会に招待されていますので、連れて行ってあげてくださいな! がぶっ!」
再びブロッコリーを齧る。
「当然だよ。さあ、もうすぐ始まる。行こうか?」
「はい!」
万鳥と言う筋肉が、私を誘導してくれる。ハットを被り、頭だけを見ればお洒落なおじさんだが、首から下は、やはり筋肉だ。胸板が厚い。腕周りが太い。縦縞の入ったネイビーのスーツの下には、宝石のような筋肉が隠されているのだろう。
そんな筋肉のおじさんと、二人でエレベーターの中へと入る。
「私の名前は、
「タバコは、筋肉に良くないですからね。酸素を取り込む力が弱れば、運動能力の低下に繋がりますよ?」
「的確なアドバイスだね……。デジルに呼ばれたと言う事は、やはり君も筋肉業界の人間か……」
「一応ですね……」
そんな会話をしている内に、エレベーターは11階へと到着した。
「さあ、着いたね。レッツ……パーティータイムだ……」
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