〈マッスル3〉ボディビルのビル
昨夜は、案の定興奮して眠れなかった。筋骨隆々の男達に囲まれた状況を想像すれば当然の事だ。普段の私は、パッチリとした目がチャームポイントな筈なのに、今日は瞼が重く、どんよりとしている。
鏡に映る私の姿は、老けて見えた。
それにしても、休日に街に出掛けるのは久しぶりだ。最近は、せいぜい生き延びる為に近所のコンビニに行くのが精一杯だったのだが、筋肉の為ならば身体は動いてくれる。
私服も、久しぶりに来た。
生憎私は、自慢出来るような身体ではないので、白い長袖のパーカーを着て、二の腕は完全に隠す。三角筋までしっかりしていれば、寒さなんて気にせずにタンクトップで行けたのに。下は、ジーンズを履く。スキニータイプの物を選び、筋肉が無ければ、せめて女性らしい細長い脚をアピールしたかった。
髪型は、ポニーテールだ。大きな赤い花弁が付いたヘアゴムで結ぶ。これが、かなりのアクセントになるであろう。地味な女だと思われぬように、服装だけでもしっかり整えよう。だけど、髪をセットしている時に、根本がすっかり黒になっており、完全にプリン状態なのに気が付いた。特に、観察力も強いデジルなら、私がガサツな女である事に勘付くかもしれない。
少し自分の見た目に不安も残しつつ、私は休日の街を目指して家を出た。
マッスルスタジオは、私の職場の比較的近所だ。定期を使って電車に乗り、いつもの駅で降りる。
ただ、車内での気持ちは、仕事の時とは違って高揚していた。筋肉達に、もうすぐ会える。ワクワクが止まらない。心と言う名の筋肉が大きく躍動しているのだ。
日曜日だからか、駅を出てからも人は少なく、足取りは一層軽かった。そして、名刺を頼りに、デジルが経営していると言うマッスルスタジオへと到着した。
そこにあったのは、予想以上に巨大なビルだ。
もしかして、凄いお金持ちなのか?
私は、更に妄想が暴走し、鼻の穴を膨らませ、にやけ顔の状態でビルの中へと入って行った。
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