第5話「離反者」

さて、千里行である!!


と、いいつつ、最初に立ち寄った村で、良い時間になったのでみんな寝るためにログアウトし、南下は次の日になった。

仕事はさっさと終わらせて快速で帰り、PCをつけてログインする。


時間を合わせてソロモンが入ってきて、兄妹が続けてログインする。


さて、千里行の続きである。

最初の村をすぐに抜け出し、南に位置する活火山へ向かう。

道中の山脈があり、そこを越えるか迂回するかになってくるが山脈なら国境越え

迂回すると時間はかかるが平地だが、待ち伏せされる可能性が高い。


さてどちらを選ぶかな…。

馬を走らせながら悩んでいた。

ほとなくして、コンスタンという湖の畔にある街によった。


~湖畔の町コンスタン~


ここは生活コンテンツのワイン生成をするブドウが栽培されており、とても盛んだ。

俺の労働者達もここで栽培・生成・箱詰め・納品を行うサイクルをやっている。

イーリアスの神への奉納と題して、対価を得れるようになっている納品金策の一つ。

湖畔とブドウ畑の景観が美しい。

湖畔に浮かぶ島に王国公認の聖メシアの大きな教会がある。こののどかな風景はどこかの絵画を切り取った絵のようだ。俺の脳内はその絵画がパズルのようにパチッとはまるような場所だ。



その大きな教会で聖水を受け取り、簡易錬金で大いなる聖水を作りやられたときのことを考えて所持する様にした。大いなる聖水は一日で最大で5個まで所持できる。人数分+自分用だという感じで所持できると思えばいい。

その準備を終えて、みんなに聞くこととした。

「ソロモン、どうする?」

「現実世界なら迂回じゃろ?」ソロモンは山脈をみていう。

「でもこれ、山道ですよね?しかもこれ切り出した山が多くないですか?」ユーグは声が引きつっている。

「その隙間を縫って渓谷を越えるんだよ!」ソロモンは激を飛ばす。

ここまで、アイオリアは無言だ。


…こいつなんでしゃべんねーんだ???


お前のせいで逃避行してんだろうが!!!!!

千里行とかかっこよくいったけど、ただ逃げてるだけだからな!!


「おい、アオリイカ!なんかいうことはねーのか?」と少し不満げにいった。

「マスターよ、…ワタシはイカではない!!アテナの加護をもつアイオリアだ!!」

「…。……。わかった、わかった。俺が悪かったよ。ツッコミどころ満載だけど、アイオリア君。君の意見を聞こう。」

俺は嫌味のつもりがキャラでこんなしっぺ返しのカウンターを食らうと思わなかった。

「我がマスター!よくぞ聞いてくれた!!!この“英雄”アイオリアに助言を聞くとは、中々の羨望だ!」

「わーったから、はよしゃべれ。」俺は頭を抱えながら促した。


「ここから南下し、かの精霊が住むグレイアン山脈を越える。迂回ルートはジェノヴァを通る。あそこはダメだ。全統治ギルドの場所だ。あそこは各統治地方エリアのギルマスが集まり、統治場所を回すとかいう談合モドキの会議が行われる街だ。あそこは不可侵条約による中立地域でもある。あそこの手前で待ち伏せして中立地域に入る前に囲まれる可能性が高い。よって!!山脈越えを是とする!!!」


おーっ!ソロモンとユーグは拍手をしていた。


口を開いたら、まぁしゃべるねー。しかも普通に会話できるのね?それ通常時でもお願いできませんかね??中二病のフルスロットルオーバードライブない方がいいと思うんだけどなぁ。

とりあえず、そのままでいてほしいのでツッコミはしない。


「ジェノヴァってサービス開始して以来の名家のエリアなのか?」と聞くと

「我がマスターよ!なぜ知らないのだ!?グスタフ・フォン・マイヤー大公殿下ですぞ?」

「す、すまん。よく知らないんだ(汗)」

「では、説明致しましょう!」

「グスタフ氏は、この世界が始まって以来の全てクエストをほぼ終えているという噂だ。しかも占領戦での数多の戦線をくぐり抜けて殿堂入りを果たし、ギルドを持たなくとも、存在が“ギルド”なのだ。そのため、強者たるもの、バランスをとる必要性がある。そのためギルドの解体があった。あの人が動けば歴史が動くとまで言われている。あそこですべてイーリアスの世界は統治されている。アーモロトなんて名ばかりの首都で、アメリカでいうと、アーモロトはニューヨーク、ジェノヴァはワシントンD.C.だ。」

「あーなるほど。そんなすごいプレイヤーがいたんだ。いそうだなって思ってはいたが、実際にいるとはなー。」

「極めつけなのは、爵位をGMから与えられているところなのだ。そして姓もつけているのです!」とアイオリアは自分の事のように言っている。デーンとアクションをおこしてキメ顔でいう。

それをみて、ユーグとソロモンはゲラゲラ笑っていた。


そういえば、姓名という概念がゲームだと自然とないのが普通だと思っていたが、上位層になるとそういうことになるのか。




とりあえず、俺らは山脈越えをすることにした。

山越えをすれば、国境を越えることになり、お尋ね者ではなく一時的にだが亡命者扱いになる。

しかしここの山には数多くの伝説の魔物が住んでいる。それらを精霊たちが宥めて安寧の秩序が保たれているという。

湖畔の沿岸を馬を走らせると山脈から流れてくる川があった。




~ローリアイ大長河~




この川はコンスタンの湖をさらに北上し、アーモロトの首都の水源でもあるのだが、さらに北上し、途中工業地帯の大運河と合流し、港町ゲフェイオンまで続く川でもある。これを軸に山脈をのぼっていくというのだ。


馬でいけるところまで登ろう。

比較的、川沿いは緩やかな勾配で馬も苦しくなく、走ることができた。

山々を双璧に挟み、少しずつ海抜が上がっていく。後ろを見ると湖畔は小さな水溜まりのような大きさになり、山々のすそ野に隠れてしまった。


前をみれば、最初の関所町“パスガ”に到着する。




~関所町パスガ~




ほぼ四方を山々に囲まれており、天然の要塞のようなところだ。町はゴシック建築が立ち並び世界名作劇場に出てくるような街並みだ。

かつて、サービス開始時における黎明期の占領戦ではここを占領とったものが戦に勝つとまで言われた場所だ。そのためここは攻略の難所とまでも言われている場所だ。

無論、今はアーモロトを占領しているやつらもここを重要視していているが、占領時期ではないため、手薄である。

このままやり過ごせることを願うばかりだ。


「やけに静かだな。」


普通に町に入った時と変わらない状況だ。

このまま通り抜けようとしたら、出口側の方にマリア達がいた。


ユーグが近寄っていくと召喚獣を呼び出しユーグを攻撃した!

サラマンダーを呼び出し炎の一撃をくらわす

「え?」と聞き終わる前にユーグの周りには、炎に包まれて後ろに控えてたアサシンが急所打ちを打ち込んで倒れた。


「マスター!!あいつ…!!」ソロモンが詠唱を始めた。


マリアが声高に叫ぶ。一般回線か。




「これはこれは!オケアノスのセイメイさん、お久しぶりです♪」

「おまえ…仲間を殺すとはな…」

ユーグは戦闘不能状態か…。復活させるにはコイツを少し移動させるしかないなぁ。


「なにをおっしゃいますの?私はあなたの留守にエウロパギルドからオケアノスを潰すと言われ、私はそんな蛇に睨まれたカエルのような状態のギルドはぬけさせてもらいましたわ!」

「な、なんだと!?」

その追手エウロパは、占領統治ギルドで指折りのギルドだ。まさかアイオリアを加入させただけでそこまで情報がまわるものなのか?

「まったく、はた迷惑ですわ!よそ者を次々と入れて、私がいるのにも関わらず、また私の支援者を入れていましたのに!」

「それはそれだ。どんなやつだろうが、よほどの事がない限り面倒みるのがギルマスの務めだろうが!」

「それに、セイメイさんは私になびく事もないですのでねぇ…」

「は?ギルマスが自ら女にかまけて女性プレイヤーのケツを追いかけるような恥さらしができるか!!」

「他の支援者はすぐになびいて頂けるのにあなたは私になびかない。それは失礼ですわ!」

「他の男は知らんよ!まったく、くだらん放送主だな。俺はそんなのどうでもいいんだよ。」

マリアはむっとして激情した。

「だからあんたは、時代遅れなんだよ!」

「そうやって感情むき出しにして、信者が喜ぶのかよ!呆れた女神様だな!」

俺は刀を抜いた。

「あんときのやられたのは演技だったというわけだな。」

「そうよ、私は手ごろなギルドに寄生してギルドバフを受けれてればいいのよ♪」

「ほんと、くそみたいな性格だな!」





時は少し遡ると、マリアがギルドに入ったときのことを思い出す。


西側に位置しているイーリアス大陸の海峡を挟んだ列島に用があった。

当時、俺は伝説の聖槍ブリューナクを手に入れるため、クエストを消化しに出向いていた時である。その際に列島にわたる前の中心街、イーリアスきってのカルシテという大城塞都市で出会った。


~大城塞都市カルシテ~


そのとき、占領戦の戦時中に傭兵を募集していた。旅の資金も倉庫から引っ張ればあるのだが、現地調達と占領戦の雰囲気を味わいたいと思い、占領戦に参戦すべく募兵に参加した俺は、異国のいで立ちでいるプレイヤーが幾人かはいたのだが、とりわけランカーという枠組みで一小隊預けてくれるようになったのだ。

傭兵枠での一小隊というのは異例である。通常は息のかかったギルメンが配備されて上からの指示を歩兵に伝えるという役目なのだが、(俺からしたら、中途半端な)ランカーということで、遊撃隊の一部に加わった。ここの戦時は前占領ギルドの奪還において躍起になっている。

城塞都市を落とすには現実世界では兵糧攻めが正しいのだが、ゲームであるのでそんなのはない。

四方から攻めて穴が開いたところに一点集中をしかけるという戦法である。

まぁタクティクス要素はあって無いような戦場ではあるが、城塞都市を落とすというのはギルドの総攻撃力を誇示するパフォーマンスにもなる。

その城塞を落とす際にかって出たというのが第三者的見方になると思う。

さて、開戦のファンファーレがなり、BGMも戦時の音楽が流れる。

「セイメイさん、よろしく」と遊撃の連隊長からメッセージを受け取った。

俺らは遊撃隊であるので最初は戦場を走り、戦況を伺っていた。城壁内に兵はいる。が、討って出るやつがいるかおびき寄せる必要性がある。

中々動きがない。

「連隊長、ここは俺が仕掛けて囮をやる。タイミングで後ろを取って崩しにかかろう」

「セイメイさん、それ無理じゃね?」

「かかればめっけものだよ。ポカーンと4時間もしてられんしな。すぐ戻ってくる。」

そう言い残し、4名を連れて南側の小高いところから様子をみる。

「んー大砲は打ち込んでるんだよなぁ。」

「あ、数名大砲の位置を把握したやつがいやがる。」

「おい、あいつらつぶしにいこう」囮作戦を中止し、そういって近づき、俺らは相手の後ろを取り討伐に成功した。

占領戦・拠点戦は死んだら自城または砦、近くの町に転送することとなる。または、大いなる聖水の数の制限内。

俺らはすぐに隊へ復帰した。

「あいつら大砲の位置大体把握しているから下げるか移動するか伝えてくれ。」

「ほう、で、(伏兵)潰した?」

「おう、だから報告の通りだ。」

「サンキュ!」

こういった小さないざこざの前哨戦があちこちで勃発していく。

じわじわと持久戦を敷いている以上、決定打に欠ける。

城門の突破を大筋として用いられるが、やはりというかどうしても尖兵達が遠距離職に潰されているようだ。そこに遊撃隊は応援に行くことにした。

そこは大激戦区だった。味方には武器の当たり判定がないため、すり抜ける。みんな接近戦だ。

沸騰した水疱のように魔法陣や召喚獣が暴れまわってそこにオーラアタックの輝きやなにやらで、眩い閃光の嵐の連鎖であった。そこに俺らは突撃をした。一点集中型が功を奏したのか、尖兵を守りながら城壁を壊して中に入れるようになった。

「おい、また新品の門が設置される前に攻めるぞ!」と連隊長が激を飛ばす。向こうのギルドVCではかなり激が飛び交っているようだ。

俺らは城内に入り、出せるだけのスキルを使って敵を薙ぎ払った。

CT中になったので交代し、後続に委ねた。

回復POTを飲み、周りを見渡すと転倒させられた味方表記のウィッチがいた。それがマリアだった。

危ない!という暇もなくカウンタースキルで敵を押し返した。

「ありがとう!助かったよ~!お兄さんかっこいいね!」と一般回線でいってきた。

この一般回線が面倒だ。敵味方関係なく一定の距離内には丸聞こえなのだ。ものすごく恥ずかしい!

恥ずかしいを堪えて俺も一般回線でいう。

「俺はそんなお世辞はいいから下がって回復しろ!城門は壊れた!一人でもウィッチが後方支援やら召喚獣を出して戦線ラインを維持してやれ!」と叫んだ。

「まったね~!」と言い残してマリアは城内に入っていった。


その後、大城塞カルシテは陥落し、前統治者のギルドが雪辱を果たし、次の占領戦までお開きとなった。


戦闘報酬は一般の傭兵よりは優遇措置されかなりの大金を手にすることができた。

これで新しいイヤリングを購入して少しでも攻撃力がUPできるぞ!と喜んでいると先ほどの連隊長が俺を呼んだ。

「セイメイさん、うちにきて今後も活躍してくれませんか?」とギルドの勧誘だ。大変名誉なお誘いなのだが、入ったあとの人間関係に遠慮しなきゃいけなのかと思うと今の俺には辟易している真っ只中、ど真ん中直球どストレートなので見送りをした。

だから、俺は人間関係につかれたくないのでギルドを立ち上げて所属するから所属させてもらうに変更路線をとったのだ。


そしてもう一人俺を訪ねる人がいた。

それがマリアだ。マリアは俺に感銘を受けたというが、うちは2.30名を入れられるほどのギルドではない。それでもうちでやりたいとのことだったので全員受け入れてた。その後、俺は聖槍探しの旅を断念し首都アーモロトに帰還するきっかけの一つにもなった。

もう一つの理由は、カルシテより南東に位置する南のバカンスの島、活火山の麓になにかあるようだという情報だけは入手したためである。まずは西より南だそうだ。

そして彼らを受け入れたあと、のちに財政難にぶち当たるのであった。




「さて、お遊びはここまでよん♪」召喚獣を呼び出し、おれらにとどめを刺す気だ。


俺は最後に聞くことにした。


「なぜ俺のところにきた?自分で立ち上げることも出来ただろうに!」


「はぁ?私はどこのギルドでもいいのよ。私に魅了されて数多の男は私に熱を上げてアピールしてきた。その度にギルド内は荒れ、解散していく。これはある意味快感なのよ。」

ソロモンがいう。

「ハニートラップと駆虎呑狼の計じゃな。」

「世間一般はそういうわ。最後のクコなんちゃらは知らないけれど、でも私が一番でなくてもいいの。その一人一人の中で一番でいいの!」

アイオリアが拳を構えていう。

「ギルドクラッシャーちゃんかぁ。俺はそういうメス豚を俺は幾度となく退けて晒しあげてきたわ!!」


…。ん?あれ??また中二病は治まってるの???



「俺も知っているよ。放送主で囲ってもらって“ナイト君”たちが君みたいな“姫”を祀り上げるのをね!でも俺はそういうの虫唾が走るんだよ。どうせ童貞共の集りだろ??」

後ろに控えている信者が一気に戦闘態勢に入る。



「なぁんだ!図星かよ!!きしょくわり~な!!同じ童貞君たちを知っているが、一生懸命に一人の女の子に求愛し、ライバルと凌ぎを削り付き合っていけるように努力をして告白をしている。そんな純粋な気持ちをもっているのだ。その誠意は美しく汚してはならない。純粋なハートなのだ!!

貴様らは!!はなっから戦おうとせず、ゾンビのように心を投げ捨ててるような死体くずに興味はないが、我がマスターの前を阻むのならば、俺が潰す!!そんでもってよくある話をしてやろう!!あわよくば童貞卒業させてもらおうとしているハイエナ野郎の歪んだ烏合の衆には俺の拳で、文字通り鉄拳制裁ってやつを喰らわせてやるよ!!」

「おら!!!どいつから死にてーーーーんだ???前でろや!!!!!」


信者達は少したじろいだ。


こんなやつらでも俺のギルドに所属していたんだ。仲間になれると思っていたんだ。これから少しずつでもと思っていたのに。所詮はこのレベルなのか?ネトゲー民は…。

悔しさと悲しさと哀れさが洗濯機でぐるぐる回っている服の気持ちのようにかき乱された。あとアイオリアってイカレてる中二病を演じておいてこういう時にまともにいうやつってタチが悪いよな?

なんつーか、アイオリア。お前の高火力期待しているぜ!!追手の占領ギルドさんにやられるのも嫌だが、こいつらに賞金を持ってかれるのはもっと嫌だ!


…ていうか、こいつがもともと原因作ったんだよな?あれ?お前が原因なんだからなんとかしろよ!!なんか俺、いっつもこいつに一杯食わされているよな??



と、困惑しつつ、戦いの火ぶたは斬って落とされたのだ。


アイオリアは天高く舞い、相手の固まっている地面に向かって、かかと落としをした。

当たり一面に閃光が放ち地面は割れ衝撃波が辺りを巻き込む!

信者達はMOBモンスターのようにバタバタと膝をつき倒れていった。


「おいおいおいおい、こんなんで姫様をお守りできるのですか?ナイト殿!」

倒れ損ねている辛うじて生きていた信者の頭を鷲掴みにし、残党狩りを始めた。

掴んだ頭を地面にこすりつけるようにし、引き釣り回して残りの信者にめがけて投げ払った。

そして瞬時に間合いをつめると、

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!!」

数名の信者に向かって数多の光を放ち、信者たちを滅多打ちにする。カウンターを打ってきようものなら、足払いを入れカウンター外しを狙い、その回転を利用してすぐさま中段回し蹴りを放つ!!

相手はもう瀕死だが、彼を止められるスピードを俺は有していない。


オーラが彼の拳に集まる!!


「フハハハハ!!くらえ!!!著作権ギリギリコード!!!」

「ライトニング・バースト!!!」


ここで水を差す第三者からの説明の仕方をいうと、正拳突きを打ったあと、さらに左手で右手の手首を支える様に掴み、いわゆる放った技の標準をぶれないようにするためと反動を抑えるように構える。

二段構えだ。左手には残りのオーラの残滓がかすかに残り、そして打ち尽くした後には消えていった。




敵は瞬く間になぎ倒されていった。



後方支援にいたのは、あの三バカトリオだった。

三バカは怯えていた。


アイオリアは三バカに向かいながら横目にマリアにいう。

「てめーは最後だ!!!!こんな簡単に殺さねー!!聖水を空にし、ログアウトするまで追い込む!!今ならログアウトする時間を与えてやる!」

マリアは金切り声で叫んでいたが、アイオリアは聞く耳を持たなかった。


俺はマリアにいう。

「あー、俺が本当はやる役だったんだけど、完全に俺達が出る幕はなさそうだが??それでもやるかい?」

「くそ!しね!!」と暴言を言い残してログアウトをしていった。


一方、アイオリアは三バカのとこまでいき、手刀を掲げていた。今にも振り下ろそうだった。

たまらず、俺は声をあげた。

「戦闘意思がないものに手を挙げるのが真の聖闘士なのか?」

アイオリアの手刀に少し迷いが見えた。

「見てみろ。彼らは信者の中でも戦闘態勢にしてないだろ?無益の殺生をするのもアテナの教えなのか?」

アイオリアは手刀を降ろした。そして、俺はアイオリアに近づき刀を納めアイオリアの肩を叩いた。

三バカは酷くおびえていた。一般回線は継続中だ。

「おまえらの親玉はお前らを捨てて消えちまったけど?」

ホルスが最初に口を開いた。

「セイメイさん、俺こんなことになるなんて思ってなかったです。」

たしかにそうだ。俺がアイオリアを入れて迷惑かけた事実は俺に責任がある。彼らを見過ごしてあげるのもありだと思っている。

「私は今回どっちの味方にもつく気はありませんけど…。」マノはグラニを見る。

「自分は今回の件である意味、目が覚めました。アイオリアさんのいうことは正しいですし、自分には出来ないので正直諦めてはいます。」

アイオリアは怒りを抑えていたのが、冷静になった。アイオリアは口を開く

「おまえら、あんなのとつるんで楽しいか?俺はつまらないと思うぞ?」

グラニは少し不満げにいう

「そもそもセイメイさんが逃亡者になるなんておもってもいませんでした。何が起きたんですか?」

俺は事の成り行きを話をした。

グラニは何か納得したような感じだった。

「俺がきいた話と全然違いますね。」

「どういう風になっているんだ?」

エウロパがいうにはこうだ。

エウロパに俺らが喧嘩を売ったことになっている。

その際に下っ端のやつらの報復だと煽った向こうのギルメンが士気を上げている。

そのため、当ギルドは当面的に狙われることとなった。

まぁめんどくさいことになってはいる。


まずは先を急いだほうが賢明だ。


三人に俺は最後にかける言葉をいう。

「三人とも俺のギルドに来てくれてありがとう。短い間でしたがお疲れ様。」

ホルスが何か感じとった。

「抜けている間、つまりマスターが帰って来る間に情報収集しようかと思います。戻るまでに何か有力な情報を掴めるかもしれません」

「君たちは自由だよ?俺は気持ちよく送り出しているんだが?」

「今回はどうもマリア様に分が悪いです。説得は出来ませんけど、セイメイさんに失脚をしてほしくないんです。自分たちは自分達なりにマスターを信じていなかった。それなのに、給料未払いさせまいと奔走してくれてました。その気持ちには打たれています。」

ホルスは話をつづけた。

「なので、セイメイさん少しは恩返しをさせてください。こんな形ですけどやれる範囲でやらせてください。」

俺は「わかったけど、無理するなよ。」とだけいって、彼らを見逃した。

ユーグはというとソロモンとクリスのおかげでその場で復活が出来た。

ユーグは生き返るやいなや憤りをもらす。

「なんなんすか?あのクソアマ!!次はブッ倒してやる!!!」と意気込んでいた。


なにはともあれ、パスガを越えていける。


このまま南下して大丈夫なのだろうか?

まだ要所は残っている。





一難去ってまた一難とはまさにこのこと。

ディアナが抜け、マリア達は離反した。


俺は自らギルマスかってでいて、やる前から出会いと別れは存在するのに、ここ数日の出来事で、自分が少し打たれ弱いのに気づかされた。やはり、近すぎてもダメある程度の距離を保っていてもダメなのかと思うと、世知辛い世の中だと悲観してしまう。それを感じている自分がまた情けないのと防ぐ可能性を知らず知らずのうちに捨てていた事を心の中で嘆くばかりだった。

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