第4話「千里行」

“銀髪の拳闘士”がこの場を去ってしばしぼーっとしていた。


俺らはアイテムを拾っていき、助けたウォーリア君の仲間を起こしにいった。

幸いまだログインしており、ウォーリア君が向こうのVCで転移復活[町に戻り復活すること]を止めていたようだ。


イーリアスの世界の経験値は一度モンスターにやられると、経験値のダウン&所持金の半分の没収とデメリットが発生する。しかし、他プレイヤーが大いなる聖水で復活作業をするとデメリットが解除されるようになっている。占領戦や拠点戦に関しては、これのデメリットが発生しない。


ソロモンやクリスが全員を起こし、ヒールなどかけて回復をさせる。



俺がそのPTのリーダーに質問をした。

「どうしてこうなった?」というと

「効率よくあげるには強敵を倒すのが一番じゃん!」と単純な回答に俺は虚しすぎて話すのをやめようかと思ってしまった。

しかし、俺は窘める様にそいつに語り掛けた。

「たしかにそうだ。だが死んでしまっては元も子もないだろ?準備はしたのか?緊急時の際はどうするかしっかりと仲間と話したのか?それでPTリーダーをしてみんなに迷惑がかかるとか考えなかったのか?」

PTリーダーはすかさず俺につっかかる

「おまえみたいな先行プレイヤーが何言ってやがる!俺らの気持ちもわからないだろ!!すでにおまえはオーガを倒したんだからな!」

「おまえ、俺もうちのギルメンもみんな苦労してるぞ?俺らは俺らの装備の中で可能な限り話をしていき、みんな同意した上で冒険にでている。君は“冒険”の漢字を知らないのか?」

「はぁ?おっさんお前何言っての?キモすぎ」

俺はカチンときた。

「キモすぎな相手に諫められている君は更にキモくなるがよろしいか?すでにPTが壊滅状態なんだぞ?その時点でPTを組んだ仲間に多大な迷惑と損失を君は与えている!それを棚に上げて、先行プレイヤーだとかキモいだとか、君は何を言っているんだ???」

どうやら彼の“スイッチ”を押したようだ。すでに俺は入って回転数は上がっている。

「うるせーな!みんな同意の上だよ!なんか文句あるのかよ!?」

「大ありだ!ボケナス!最後のPTメンバーが死んだらどうするつもりだったんだよ!!??オーガ何体出現させてんだよ!?」

助けてあげたのに、ありがとうすら言われない、むしろ迷惑がられている。こんな世界やプレイヤーがいる。なぜなのか俺にはわからないのだ。

「オーガは後回しにして、ゴブリンを倒していたんだよ!文句あるんか?」

「あのなあ!クエスト内容もわかんねーのかよ!?オーガ一体とゴブリン1000体、他無制限だぞ?」

「クエスト報酬はいらないからみんなで分配するだけだわ!」

「そんなやり方でみんながついてくるか?ああ???」

俺はPKモードオンにするところまでキーが伸びた。


そこに溜りかねたディアナが割ってはいってきた。


「双方引け。マスター。あんたは格下に文句をいえば気が済むのか?」

ディアナは俺を睨みつける。

「助けたのに礼を未だに言わないそこのポンコツ脳みそに腹が立つだけだ!」

「では、そちらに問う。このままヒートUPした挙句、今度はPKされて放置されても良いという見解でよろしいか?少なくとも基本放置されるのが関の山だ。あのまま戻ればお金も時間も徒労に終わるのは必至。それでいて、マナーの悪さは仲間にも影響する。それを理解しての言動か?」

「…。」

ディアナがまとめる力は不思議だ。なぜか俺のいう事を聞かない相手を黙らせてしまった。

「少なくとも、自分はこのマスターのもとでやっているが、君が駆け出しのマスターならば、君を教育する仲間もしくは同志を募ればそれは可能だ。しかし他のプレイヤーをみろ。君を擁護する仲間がいないではないか。」

「ディアナ、すまん。もういい…。俺がどうかしてたわ。」

俺は怒りが消えてただただ哀れな気持ちになってしまった。

「君のやり方を否定する気はないけど…まぁ頑張ってくれ。」

そう言い残すと俺らは港の桟橋に向けて歩いていった。

むこうのウォーリア君は個人チャットで「ありがとうございました。」ときたが、俺は返す気になれなかった。




~ケブネカイゼの氷美林~



ケブネカイゼはランダムで横殴りの雪が吹く。

その横殴りの風が木々にあたり、生成されていく。

現実世界でいうと、樹氷である。

樹氷はおよそ氷点下5度以下に冷却した水蒸気や過冷却の水滴が、樹木などに吹きつけられ凍結してできた氷。気泡を多く含むため白色不透明で、もろい。

木々がまっすぐ伸びた針葉樹林であるため、綺麗な氷の柱が幾多にも立っているため、氷美林といわれるようになっているのだ。


俺はアイテムの清算をまだやっていなかった。

港付近の安全地帯で分配するようにした。

クリスは全体の1/5を渡すようにした。しかし、貰い過ぎだといって断ろうとしていた。

「君の活躍に対して対価なんだが?」

「いえ、私は何もしていません。」

「そんなことはないぞ?うちはこのままやっているんだぞ?受け取りなさい」と再度受け渡しをした。

じゃあいただきますということで受け取ってくれた。

そんな中、レアドロップ報酬はというと…


“オーガリングの指輪”が出ていた!


やった!と俺は思わずさけんでしまった!!


オーガリングの指輪 指輪と言ってもヒューマンサイズでは首輪/ネックレスにするレベル

重さはさほどないが、装備すれば攻撃力が30も上がる 高額な金額で売買されている。流通量もほどほどであるが、やはり求める冒険者は多いので値崩れしない。


「これさえ売れればみんなに給料が払える!ディアナ、ソロモン、そしてユーグ!助かったよ!」

システム上、売買の取引をそのまま流せるので、そのまま流す事にした。

「いやぁ長かった~!一時はどうなるかと思ったわ~!」

ほっと一息をついた。


あとはディアナのエルフ村にいくことだ


ディアナは後ずさりした。


ディアナは語る


「マスターとはここでお別れです。」

「え??」

「このギルドは好きですが、あのような格下相手に熱くなるようではこの先、思いやられます。マスターは最後まで熱くなってはいけないと思います。」

「おいあれは…」

「いえ、だめです。あなたはギルドマスターになるにはふさわしくない。ギルドマスターは常に冷静沈着。ここぞという時に発言をしなくては軽くなります。あんなとこできゃんきゃん吠えているようでは質が問われます。」

「まじかよ…。」

容赦なく俺のシステムには【ディアナさんがギルドを脱退しました。】の文字が並んだ。

「ちょっ!おいまてよ!」

聞いてるのか否かわからない状態でディアナはログアウトした。

悲しみにくれている俺にソロモンは肩を叩いた。

「まぁなるべくしてなっちまったわけだ。しかたねーな。」

「俺は驚きました。ディアナさんはギルドに相応しい方だと思っていたので。。。」

ユーグは鳩が豆鉄砲を食ったような声色を見せていた。

俺は何がいけなかったのかが、わからなかった。


俺が正しいと思っていた発言が違う視点からそういう風に映ってしまっているというのか

今の俺にはわからなかった。だから、無理やり気持ちを入れ替えてニュートラルにした。

そして、去った事を悔やんでも仕方がない事だと言い聞かせた。


こんな状態でクリスに聞くのはどうかと思ったが、一応聞くことにした。

「あ、私は入りたいと思いました!発言も自由だし狩りがこんなに楽しめたのは初めてでしたから!」

ここで俺は断られたら、立ち直れないと大袈裟に思った。

「そうか、ありがとう!俺の醜態を晒しても入りたいと思ってくれて…」

しかし、クリスはケロっとしていた。

「あんなの前のギルドは日常茶飯事で当たり前だったので、全然気にしてないですよ?」

「そ、そうか。それもまた問題なんだけどな。ははは…」

とりあえず、契約書を交わし紋章を腕章にするか、マントにつけるか兜につけるか任意でつけてもらった。

クリスは胸の真ん中につけてくれた。


いいのか!?俺個人としてはかなりうれしい!!


オケアノスの紋章は錨をセンターにあしらい、剣を後ろにクロスさせていて、周りを舵で象るデザインにしてある。海洋クエストをメインにやってそうなギルドだと思うだろうが、オケアノスなので海にちなんだものでいいかなって思って作成した。


クリスの設定はやけに胸が大きい。それゆえにこの紋章はある意味、隠れ蓑だ。目の保養になる。これは男の悲しい性なのであろう。


まぁそれはおいといて、後ろ髪を引かれる思いで王都に帰ることにした。



~ガレオン船~


まだ、俺はディアナの言葉が引っかかっていた。


俺はどうしたのものかと頭をかいていた。

ふとソロモンが話しかけにきた。

「そんなに悩みなさんな。」

「ああ…少し気になってて。」

「経営者というのは、やめた人間の事なんか普通考えている暇なんかないんだぞ?」

「え?」

「大半は会社や経営者、上司に不満がある。給料がついでに出てくるが、ゲームだからそれは今回の事に当てはまらないがな。話を戻すが、だからといって体制を変えることはできない。その上で出来ることをやった結果、報われてないのであれば十分退職する理由になることだな。」

「じゃあ今回は?」

「わからん。ただ、適当な理由がほしかったのかもしれない。」

「それが俺がもめたのと何の因果がある?」

「それが理由だよ。揉めた事を理由にして辞めるきっかけが出来たからだよ」

「そんなことで??」

「マスターは経営者やったことないだろうけど、ワシは知っている。色々な人間が出て入ったりと見てきたがね。」

「ソロモンの会社ってブラックなの?出入り激しくない??w」

「違う違うw辞める時の雰囲気とかそういうのよくわかるんだよ。中には本音でいってくれる人とかいたけど。」

「そうなんだ。必ず答えがあると思っていた。向こうには明確な答えがあっても、俺には通用しないとか、いっても理解してもらえない。だから、いっそ、適当な理由が出来たり発生したらそれを理由に辞めるというのも、これもなんだかしっくりこない。」

「そんなものだよ。辞めていく人間の理由は。」ソロモンはつぶやきながら海を見ていた。

「そうか…。切ないね。経営者って…。」すこし声がかすれてしまった。

ソロモンはにやりと笑い思わず、大笑いをしながらいった。

「だははははは!!お主、見込みあるじゃねーか!マスター!お主はワシの気持ちを救っているんじゃ!」

「え?」俺は少したじろいだ。

「そういう、モヤモヤをワシも感じてるしマスターも感じた。だからわしらは同志じゃ!」

俺が浮かない表情をしていると、

「お主はゲーム、ワシは現実リアルでの経営者じゃ。なんかあれば相談乗るぞぃ♪」

ソロモンってこんなキャラだったけ?意外な一面をみた。


ケブネカイゼはもうあんな遠くに見えている。


ケブネカイゼの氷美林は美しかった。

俺にとっては色々ありすぎて美しいあの樹氷は俺の心を凍らせた。



俺は当分見たくないとケブネカイゼを見ながら思いを閉ざしていた。




~港町ゲフェイオン~




この街に戻ってあと2日後には給料の自動払いが発生する。

アイテムはまだ売れていない。こういう時なんで売れないのだろうとやきもきしている。

即売れアイテムではあるのに…。


仕方ない。王都に戻ろう!その間に売れているだろうと信じ、馬に跨った。

帰りも同じようにクリスを後ろに乗せて走る。

あとはアポカリプスのやつらに出会わない事を祈るばかりだ。



“あの場所”を過ぎ去って王都手前の林道に差し掛かった当たりに検問所できていた。

ふと、周りをみると冒険者達が一列にならんでいる。

なにがあったのかユーグに聞き込みをさせていた。どうやら“ネタ”を掴んできたみたいだ。

「どうだった?」と聞くと、密談が飛んできた。

「どうやらPKが多発していたらしく、大手ギルドがカンカンになっているみたいで、一斉検問らしいですよ?」

「おいおい検問って特別税収をするんだよな?」

「そうですよ?いわゆる通行手形を買えってやつです。」


現実の世界とは違い、イーリアスの世界の検問は領主ギルドに私達はあなたに服従しますという意味で通行手形を買い、お金収めることである。それでこの世界は街を出入りできる。

が、今回はどうやら刷新したものを配るらしい。

治安維持のための運転資金になるので、仕方がないものではある。

にしても、痛い出費であるのは間違いない。

仕方なく並んでいると遠くで大声が聞こえてきた。

「冗談ではない!」

「この私に通行手形を買えというのか?この聖闘士セイントに!」

「あ、あいつ…」ソロモンの胸をコンコンと叩き、あれあれとさしてソロモンの視線を伸ばした。

「おい、このまえ版権問題がどうとかいってたやつじゃな!」

「ていうか、自分でいうか???フツー」


俺はソロモンに順番を任せて近づく。



やはり、銀髪の拳闘士だった。

大手ギルドの下っ端ともめていやがる。


PKモードオンにしてNPCの衛兵を潜り抜ければ、街の中には入れるがそれを行なうとお尋ね者となり、賞金首になる。1週間は犯罪者扱いされ、統治内のみ適応される。

俺は彼を宥めることとした。

「落ち着きなよ。拳闘士さんよ。」

俺は彼の肩を叩いた。

「だれだ!気安くさわるな!」と俺の手を払った。

それと同時に俺の顔を見るないなや目を輝かせておおっと叫ぶ。

「聞いてくれ、マスターさんよ!こいつら俺をみて通行手形を払えっていってるんだぜ?この英雄に向かって!」

(いつから英雄なんだ??)

「いやしかし、通行手形はれっきとした仕様だからなぁw俺は払うつもりでいるけど…。」というと、彼は声を荒げた。

「何をとち狂っているんだ!この土地は新規も古参もいる街なのだ!こんなバカげたことをすれば、新規ユーザーは減り、人口が減るではないか!それを領主さんは知っておられるのだぞ??」


たしかに銀髪野郎のいうことはもっともだ。

しかし、今統治しているギルドは中々のギルドだし治安維持のための通行手形は定石であると思う。


「いいから払ってください。じゃないと反抗とみなしますよ!?」

と検問者はいう。

「よかろう!この我が正義の拳で語らせてもらおう!!」

「はい、ヤメヤメ!!俺が払うからこの場は収めてくれ!!」俺は慌てて二人を離した。

「げせぬ!げせぬはぁぁ!!!」と銀髪はいう。

「後ろの人間にも迷惑かかるんだからやめなさい」といったが、彼はPKモードをオンした。

警笛がなり、俺らは囲まれそうになった。

しかし銀髪は空を飛び、地面を叩き衝撃で衛兵と検問者を吹き飛ばした。

あーあやっちまった。

こうなると、話は銀髪に犯罪者マークがついた。俺は慌てて離れる。

彼は検問者を倒し衛兵と互角の戦いをしている。

おいおいあの衛兵ってシステム上倒すのにじかんかかるんじゃないのか?

しかし彼は電光石火の如く周りを一蹴する。


彼は俺の方に向かってきた。と思ったら俺の後ろの衛兵に飛び蹴りスキルを打ち放ち検問の列の最後尾へ向かう。

俺はとっさに彼を追いかけてしまった。

彼はどうやら逃げるつもりらしい。

そこでソロモンと並んでいたクリスと銀髪は目が合ったのか、急に立ち止まる。

「おい、クリスティーナじゃないか!!」

「お、お兄ちゃん!!??」

「貴様、このゲームはもうやめろといっただろうが!」

「別にいいでしょ!?私の好きでやっているの!!」

と、兄妹喧嘩が始まった。

こいつ、とんだトラブルメーカーじゃねーか!!!


そうこうしているうちに、衛兵と監視官、そしてギルドの副隊長クラスまできた。

これは分が悪すぎる!

検問官は俺らを指さして何かを伝えている。どうやら俺らも一味だと思われている!?

これは相当まずい!支払いが済んでも根掘り葉掘り聞かれて面倒くさいこと間違いなし!!!!


一難去ってまた一難っていうのかこういうの!!?


ソロモンとクリスを馬に乗せて逃げることにした。

「ソロモン、とりあえずこの場から離れろ!!」

俺はすぐさまここを立ち去ることを提案した。

銀髪は自分の馬を木の陰に隠してたらしく走り抜けている。

俺らも捕まるまえに逃げよう!


かくして俺らは必死になりながら、王都を後にした。



~王都が見える丘~



俺らはちりじりになりながらも、なんとか追ってから逃れられた。

俺は馬をおり、銀髪に文句をいった。

「どうしてくれるんだよ!!これじゃあ給料未払いでギルド解散しなくてはいけないじゃないか!!」

俺は刀を抜き、勝ち負け関係なくやけくそでPKモードをオンした。


一気に一触即発の状態になったその時、「セイメイさん待ってください!」とクリスが叫んだ。


「兄が暴れて迷惑かけてしまい申し訳ありません!!」とクリスが謝った。

さっきまで検問官と言い争いをしていたとは思えないほどその兄は落ち着いていた。

「おいてめーなんでそんなに落ち着いていやがる!きにくわねーな!」

すかさずクリスは割って入る。

「兄は…その、助けにきてたのです。」

「はぁ???」


「実は先日倒れていた際にセイメイさんは私を救ってくれましたよね?」

「ああ、アポカリプスの連中からのことか?」俺は思い出しながら話をしていく。

「そうです。あのとき、兄に連絡をしてて助けてもらう予定でした。」

「えー?あー??そうなの???」

「そうです。」俺は謎が解けていない。クリスは話をつづけた。

「あのあと、すごく良くしてくれていて気持ちが動かされて一緒に旅をしたんです。」

銀髪がようやく口を開いた。

「我が妹を助けるため仕方なくむかったところ、妹のキャラはいなかった。そのためメッセンジャーでのやり取りを行った際、君たちの後を追う事になった。」

「私はもう大丈夫だよっていったんですけど…。」

「この私の妹を救ってくれた御仁に礼を言いたくてな!フハハハハハ!!」

「んじゃあ御仁の俺になんでこんなわけわからんことになって巻き込まれてんだよ!!ギルドの給料日は明日だぞ??こんな大事な時期になんてことしてくれてるんだ!!」

「ほう、そうだったな。経営難なのか??」

「ああいきなり人数が増えて資金がそこをつきそうになったんだ!だから旅に出たのだ!」

「ほほう、それで?いくら足りないのだ?」

「オーガリングの指輪が売れれば、自動的にギルド帳簿に入る仕組みだ。だが、まだ売れていない。」

こんなことを言わなければならない自分が本当に悔しい。なぜ俺はこんなやつのために事情を話し、更に検問から逃げなけばならなかったのだろうか!!

「ふむ…。」銀髪はシステムを開き取引所をみている。

「よかろう!この価格なら資産扱いにして俺が買ってやろう!!」

「は?バカいってるな!このアイテムはな…」

「そうレアアイテムだよ。」と俺の言葉を遮るようにいってきた。

「俺が求めていたアイテムとは少し違うが、先ほどの無礼をお詫びするつもりでこれを購入しようというか、今した。」

「なぁにいっていやがる!そんなポンと買える資金なんざもってねーだろうが!」とまくしたてようとしたら、システムで【オーガリングの指輪が購入されました】と出てきた。

「ね?」と銀髪は笑顔でいう。

「これでセイメイ君の悩みは解決したわけだ。妹を救ってくれた礼は亜種討伐の助太刀、そして、今回のお詫びもこれで済んだわけだ。」と不敵に笑っていた。

「ちょっとまて。クリスは助けに来るのは知っていたのか?」

「あぁいやその…。実は…あああっはあははは…」

兄妹揃って食わせ物である。

ソロモンが「だからか!」となにか閃いたような声をあげた。

「いやほら、マスターとか回復してた時にクリスだけ下がって祈祷してたでしょ?あの時のもうわかってたんじゃない?」

俺はすぐ振り向いてクリスをみた。

「連絡が来てて、キャラを後衛で回復させている時に兄に居場所を連絡したのです。」


「な、なんだって!!?」

俺は、どうやらいっぱい食わされたのだ。


「セイメイさん、私の祈祷終わればゴッドのご加護ブレスが発動して、短時間ではありますが無敵になりますので、そこで全員でラッシュをかけてもよかったですからね♪」と笑顔でいう。

「おいおいそれで俺らの亜種報酬をわざと俺から許可を取って横取りか???」また腹割ら煮えくりかえりそうになった。

銀髪は鼻の頭をかきながらいう

「そうだけど、まぁ結果はスカだったわけなんだなー!人を騙しても良い結果はでないってこと。お天道様がみてるのだ!!」


「おまえら…!!」


「その罪滅ぼしにオーガリングの指輪を落札して解決はしたのだ。騙してた事は悪かったよ。そんなに目くじら立てないでくれ。」

「すまん。そして妹を救ってくれてありがとう!」

と、彼は頭を下げてきた。


ここまで謝罪と感謝をされたら、怒るに怒れないのだ。

彼らは非を認めていて、感謝の礼もしてきた。

そして、俺らのギルドの問題解決をしてくれているのだ。


しかしだ、ものすごく不完全燃焼なのだが!!冷静になって当初の目的は考えた。


そう、意外な結末ではあるが解決をしていたのだった。

かくして最初の悩みはこんな事で解決してしまったのだ。あまりにもあっさりと苦労が水の泡になったのではないのだが、そこの感触だけはじとっと心にへばりついていて中々とれなかった。


「なんだこの腑に落ちないのは!!」俺はイライラしていた。

ソロモンが俺に耳打ちする。

「ついでにブリューナクを取りに行くというのに同行させようぜ?こいつの火力はお主も知っておろうが。」

たしかに強い。戦力としてはディアナの穴をコイツが埋めてくれれば、ギルドとしてはなんの問題もない。

「でも、こいつ今お尋ね者だぞ??」とソロモンにいう

「高火力問題児がこの先の逃亡生活に役に立つのだからPTにいれておいてそんはないぞ?」と俺の懐を見透かしていう。


くそっ!もうやけくそだ!!!


「おい、そういえば銀髪。名前聞いてないな。教えろ」

「我が名は、アイオリア。聖闘士だ!」


「…。おまえ、それ自分でまずいって言ってなかったか?」


「いいのだ。」


…コイツ、ユーグよりひどい厨二キャラだ!!!そして自己中!!!ユーグはネタな部分はあると思っていたが、コイツは筋金入りの方だ!!!


アイオリアはいう

「クリス、おまえはこのギルドに入ったのか?」

「うん、セイメイさんが優しいから。」

「よし、じゃあ兄である私も入ろう!!」



「…、は?はぁ????????」



俺は耳を疑った。振り向いて目を合わせると、ソロモンやユーグは手でOKを出していた。

まぁブリューナクの事を考えたら…。この先の事を考えたら、安い買い物だと思えばいいか…。



んーーーーなんかしっくりこねーーー!!!!!!



そして、アイオリアは我がオケアノスのギルドに入ったのだった。

俺はしぶしぶだと念を入れた!!


そうこうしていると王都からの追ってが林道に待機しているのが目に入ってきた。

どうやら俺らはお尋ね者になってしまったようだ。


~南の離島~


王都より南にいくと海に当たる。

そこより、南に船で移動すること1日活火山が見てくる。そこで手に入る特別な鉱石を拾うことが目的である。



俺らは当分王都に入れないので、南に進路を取る事となった。

当初は俺はソロで様子をみて、みんなに声がけをしギルドクエストも兼ねていく予定ではあったのだが、少し予定が狂ってしまった。まぁ、アイオリア。君の実力を借りようとするか。


「まぁマスターよ、出会いってのは大事にすべきじゃ。」ソロモンは俺に優しくいってきた。

「大丈夫かな?」と俺は相変わらずの疑り深い癖がでてしまった。

「南ってことはパラダイスじゃないですか?♀プレイヤーがたくさんいて目の保養になりますね?」とユーグは楽しそうにいった。それはそれで美しい描写ではある。


「では、我がマスター。これより千里の旅が始まりますよ?いざ出陣!!」と軽快に馬を走らせた。


かくして、俺たちは王都からにげるように馬を走らせた。

「セイメイさん兄共々よろしくお願いします。」

クリスは俺に丁寧にあいさつをいってきた。


この先には難所があるのだぞ?まったく千里行だな




三国志に出てる関羽公とは違った、俺らの千里行をするのであった。




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