第2話

私はそのまま轢かれてしまいましたが、運転手が急ブレーキをかけたことと当たり所が良かったことで、幸いなことにたいした怪我にはなりませんでした。


運ばれた病院もその日のうちに自らの足で歩いて帰れるほどで、駆けつけた両親を安心させました。


警察やらなんやらといろいろありましたが、それも思っていたよりもスムーズに片がつきました。


運転していた若い男は書類送検されたそうですが、私にはもう興味がありません。


そうなると気になるのは、あの手紙です。


十七年間生きてきて、車にはねられたのは今日が初めてでした。


その日の朝に、あの手紙は私の下駄箱に入っていたのですから。


まるで事故を予知するかのように。


そして私が青信号だからといって油断せず、あの手紙に書かれていたことに従ってちゃんと左右を確認していれば、信号無視の車に気いて轢かれることもなかったでしょう。


あの手紙は警告の手紙だったのです。


――誰から?


考えましたがわかりません。


手紙の字は成人した男性が書いたもののように、私には見えました。


私は何度となくあれこれと思いを巡らせてみましたが、結局なに一つ答えを導き出すことが出来ませんでした。



それから一ヶ月ほど過ぎた頃のことです。


再びあの茶色い封筒が下駄箱の中に入れられていました。

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