第40話 わたしが救世主です!


家に戻った俺たちは、留守番していたスピカたちに事情を説明した。

スピカとベラは一緒に進軍したい!と気合い十分だ。特にベラはドラゴンと聞いてニヤついていた。

ドラゴンで一番被害の出ているナザット国の人が見たら、不謹慎だと怒られてしまうのではないだろうか。

俺はそのうち、胃を痛める気がする。


その後、遅れて家に来たシリウスは、調査官の討伐依頼をする時の装いだった。いわゆる戦闘服だ。

それを見て、俺も必要なのでは?と思い聞いてみることにした。


「俺も戦闘服的なものを着た方がいいのかな……。」

「慣れない服を着ると動きが鈍るぞ?」

「だよね。」


戦闘服とかカッコイイと思っていた俺の考えは、あっけなく潰えた。


(出来るだけ、厚手の着なれた服で行こう。)


1番厚手の服……作業着じゃないか?ハッとして、さすがにそれはと首を振る。

その間も手を休めていたわけではない。ちゃんと準備は進めていた。

馬車に改造していた飛行機は、溶接部分を分解して組み立てる。

今回は、引っ越す時と違い俺とアルタイルとルナの3人の手があるので、あっという間に組み立て終わった。

どうやら整備も問題なさそうだ。


壊れたりしたていたら、俺一人で鉄腕アトムみたいに飛んでいかなければと思っていたのでホッと胸をなでおろす。

一人は心細い。

完成した飛行機を見て、シリウスが瞳を輝かせている。

何だかんだ、科学に忌避感のあるこの国で育っていても、男の子はカッコイイ乗り物が好きなのだ。


「その飛行機は何人乗りなんだ?」


そわそわしながら聞いてくる。


「残念ながら、二人だ。」

「シリウスはまた今度じゃな。」


さすがに今回の作戦で、その二人に自分が入ることはありえないのは分かったようだ。

アルタイルが悪戯な笑みを浮かべて、落ち込んだシリウスの肩をたたいている。


そうして、まだ夜が明けぬうちに俺たちは飛び立ったのであった。

飛行機は二人乗りだが、ルナはウサギになって俺の肩に乗り、ついてきた。

ドラゴンが大体どの方向に居るかがわかるらしい。今は遠すぎるようだが、分かったら教えてくれる。

なので飛行機にはアルタイル、ルナ、俺の三人が乗り込んだ。

『偵察&沈静化』を目指して約1か月ぶりの飛行機だ。


そして、シリウスたち残りのRENSAメンバーは騎士団に合流してもらった。通信機もあるし、なにかアレば全力で逃げる事も大切だと知っている。心配はしていない。


こうして……ラーヴァの夜が明けた。

騎士団は、住民を刺激しないように街の外で出立の為の準備をしている。

そこへ馬の蹄の音が響く。風属性の魔法をフルに使った駿馬だ。こちらの世界の馬は魔力をもち魔法が使えたりする。

飛ぶように地面を駆けて来たその影は、ものすごいスピードで近づいて来て、騎士団の目の前で止まった。


そう、皇都からの『たった数人の援軍』が来たのである。その数、総勢8名。

先頭を駆けていた、たぶんこの援軍のリーダーだろう小柄な甲冑の魔法使いが、マントを翻して馬を降りその冑(かぶと)を取る。


「お待たせしました。我々は皇都騎士団の魔法精鋭部隊。私はリーダーのシャウラ。」


長いストレートの黒髪が朝日を反射して輝き、切れ長の目が自信に満ちた輝きを放っている。

360度スキのない、女性魔法騎士がそこにいた。


「安心してください、私たちはそれぞれが一騎当千。必ずドラゴンを屠って差し上げましょう。」


最後にニッコリと笑う完璧ぶりだ。


「本当にありがたい、8名とはいえ本当に援軍にきて下さるとは。」


レグルスは一歩前にでて、シャウラに握手を求める。

彼女はその手を握り返すと。


「この国を守る為です。貴方たちは私たちのバックアップだけしてくれればいいわ。ドラゴンは私たちでも十分倒せると思っています。」


にこやかに、何の含みもなく心からそう言っている顔でシャウラがレグルスに告げる。

レグルスの口元がヒクついていたのは、言うまでもない。

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